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【紫原明子のお悩み相談】家計のために働きに出たいのですが、夫に反対されています。

『家族無計画』や『りこんのこども』などの著書があるエッセイストの紫原明子さんが読者のお悩みに答える連載。今回は働きたいと願う小さな子ども2人を持つ母からの相談です。

<お悩み>
専業主婦をしております。 主人の会社はお給料はいいですが、激務です。年齢や体力的なことから転職を考えていますが、給与面からなかなか踏み切れないようです。
そこで私も働きに出たいと考えているのですが、主人は反対しています。せめて子供が小さいうちは家にいてほしいと言っています。
私は将来のことを考え、なるべく早く働きたいと思っているのですが、まだ小さい子供を預けてまで働きにでるべきなのか悩んでいます。 アドバイスをいただけると嬉しいです。(相談者:あらら/女性/30代専業主婦、3歳と0歳の子供がいます。)

紫原明子さんの回答

あららさん、こんにちは。
早速ですが、あららさんが働きたいと思うのであれば、絶対に絶対に絶対に働いたほうが良いと思います。
悲しいことに、専業主婦として一生懸命家事や子育てをやっても、世の中はその価値を社会的な信用の担保として全く認めてくれません。正社員としてどこかに勤務していたり、自分の名前で納税したりしていなければほとんどの家を借りられません。子どもたちが小学校や中学校に上がる頃、子育ても一段落したから仕事を再開しようと考えたところで、特別なスキルやキャリアがなければ正社員として受け入れてくれるところは少なく、優秀だった人は子育てを終えた頃、皆当然のようにパート勤務になっています。
それでも、夫婦関係や夫婦の健康に問題がない間は良いのですが、たとえばどちらかが突然病気になるとか、離婚することになるとか、そういうことが絶対にないとも言い切れません。だから、本当に子どもの生活を思うならば、むしろリスクヘッジとして夫婦が二人とも働いておくに越したことはないだろうと思うんです。

何より、働くことはあららさんの当然の権利です。同じように親になったのに、一人だけが結婚をやめれば生活がままならなくなるリスクを負うのはアンフェアですよね。

……ってそもそも、私的で閉鎖的で他者不可侵の恋人関係から、ただでさえちょっと社会的な夫婦関係なった二人の間に、子どもが生まれてしまえば、やっぱりより一層、関係性が社会化してしまうことは免れないのですが、でも、だからって、そうとわかっていてもやっぱり「権利」とか「アンフェア」みたいな単語は、夫婦の間ではできるだけ持ち出したくないですよね。できればその辺、こちらが言わずとも当然相手に考慮しておいてほしいなって思ってしまうところですよね。お互いに相手の人格を尊重する気持ちさえあれば、本当ならば必要ないことのはずなので。
しかしながら、現状として専業主婦になることにおける妻側のリスクや喪失があまりにも一般的に意識されていないので、やはりこれは一度、旦那さんとちゃんとお話されたほうが良いと思います。

それにしても旦那さんはどうしてあららさんが働くことを嫌がるのでしょうか。
子どもが小さいうちは家にいてほしい、というのが一番の理由であれば、子どもを保育園に入れることは、決して可哀想なことではないと旦那さんに教えてあげてください。子どもを保育園に入れるというのは、子どもが親以外にも自分の成長を見守ってくれる存在を得るということで、基本的には子どもにとってもいいことなんです。昨日できなかったことができるようになったねって、見落とさずに気付いてくれる人が家族以外にもいるって素晴らしいことじゃないですか。
またむしろ、それがお母さんだけに依存されている状況は不健全な気もします。なぜならその場合、お母さんに何かあったら、子どもの理解者はいなくなってしまうからです。子どもを育てる人もやっぱり、稼ぎ手と同じように、一人だけだとリスクなんです。

旦那さんは激務のお仕事に就いていらっしゃるということで、今はとにかく仕事に集中したいという思いが強いのかもしれません。もしかしたら、共働きになって、家事や子育ての分担が増えることに少なからず抵抗をお持ちなのかも。でも、人間の価値って、働いてお金を稼ぐことだけではないですよね。大切な人と過ごす時間も、余暇や趣味も、自分とは何かって考える時間も、豊かで人間らしい人生を送るためには、どれもおろそかにしてはいけないものです。

仕事だけを一生懸命やってきて、プライベートをおろそかにしてきた結果、ふと気がつくと50歳前後で友達の作り方がわからない、趣味がない、家族ともろくに口をきかない、というような悩みに直面する男の人も、決して少なくないように思います。
だからこそ、あららさんが働いて、その結果、旦那さんが家事や子育てへのコミット度を今より高めることは、長い目で見ればきっと、旦那さんのためにもなるだろうと思うのです。

よろしければこういった視点もふまえた上で、ご家族にとって何が幸せなのかを、ぜひ今一度、旦那さんとお話されてみてくださいね。

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イラスト:わかる
イラスト:わかる

紫原明子● 1982年、福岡県生まれ。個人ブログが話題になり、数々のウェブ媒体などに寄稿。2人の子と暮らすシングルマザーでもある。Twitter

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