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木村多江さんの素敵になる秘訣。「自分を許して、受け入れる」

年齢を重ねるにつれて、課題を乗り越えさらに素敵になる秘訣は何だろう? 木村多江さんに聞きました。
  • 撮影・青木和義 スタイリング・成子美穂  ヘア&メイク・土谷郁子(FACE-T) 文・大澤千穂

穏やかな笑顔、憂いの眼差し。カメラの前で木村多江さんが表情を変えるとき、周りの空気もがらりと変わる。

「でも実は人前に出るのが苦手。お芝居でも本番より、役を妄想する時間が好きです。家でも、その役になりきって家事をするんです。例えば神経質な役なら執拗に野菜を洗うとか(笑)」

でも夫や子どもの前では決して女優の顔は見せないという。

「セリフは家族が寝てから覚えて、妄想するのも皆が留守のとき。私の最優先事項は、家族が笑っていること。家では仕事の話は一切しません」

結婚して12年。今や家庭という基盤を持つ木村さんだが、その20代は孤独と葛藤の日々だった。

「21歳の時、突然父が過労で亡くなって、生きる気力を失くしてしまったんです。娘の私が心配をかけたせいだと自分を責め、お芝居することが唯一の罪滅ぼしだと思ってひたすら仕事に打ち込んでいました。でも当時の私は自分も、自分の芝居も好きになれず、人と関わるのも避けていました」

薄幸な役が似合うと言われるけど、 私、意外と生命力が強いんです。

しかし幸薄い女性像を演じる姿が評判を呼び、30代になると仕事は多忙を極めた。そんな時、新たな壁が。

「役者って結果を出さなければ次がない。危機感と多忙のあまり、最高点ではなく合格点を狙っていたんです。そうすると役者としては面白みに欠けますよね。今度は『私はつまらない役者だ』と焦って、空回りして……」

自分を見失いそうになっていた木村さんの転機となったのが、主演映画『ぐるりのこと。』。

「だんだん壊れていく女性の役だったんですけど、彼女の夫は何があっても妻の手を離さない人で。ああ、こういうことができる人になりたい!と思ったんです。それまで傷つくのを恐れて人と距離を取っていたけど、人と人の間にしか物語は生まれないから」

その思いが木村さんの姿勢を変えた。仕事をセーブ。ゆとりを持って生きるようにし、母になったのもその頃だ。

「選ぶ仕事も変わりました。小さな役でも人を幸せにする役を、とか。思えば幼い頃は家族の前で弟と漫才していたんですね、皆を笑顔にしたくて。それが原点だし、今の私の存在価値」

そう言って微笑む木村さん。悩み多き20代、30代を乗り越えてしなやかな強さを手に入れた今、彼女が演じる役の中にもはかなさだけでなく、どこか芯の強さが感じられる。

「薄幸な役が似合うと言われるけど、私、意外と生命力が強いんです(笑)。垣間見える強さが本当の私かな」

現在46歳。仕事も家庭も充実しているが、新たな課題も感じている。

「40代になると自信がつく反面、傲慢で保守的になってくる。挑戦心を忘れず、次の10年を生きたいです」

最後に尋ねてみた。木村さん、今の自分は好きですか?

「はい。自分を好きになるって、自らを許して受け入れること。それができて楽になりました。いわば私は『木村多江物語』の主人公。つらいことが起きても、物語全体が面白ければいいんじゃない?って今は思うんです」

『クロワッサン』948号より

●木村多江さん 女優/1971年、東京都生まれ。舞台で活躍後、数々のドラマや映画に出演。主演映画『ぐるりのこと。』で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞受賞。現在NHKの土曜ドラマ『4号警備』に出演中。

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