四季のうつろいを感じに。千葉の新施設「大多喜有用植物苑」で植物に癒される
写真・文 久保田千晴
暮らしの知恵を、植物とともに再編集する
「大多喜有用植物苑」があるのは、温暖な気候と豊かな土壌に恵まれた千葉県・中房総エリア。広葉樹の森と清らかな水に育まれたこの土地では、古くから薬草やハーブが人々の暮らしに取り入れられてきたのだとか。
今回のリニューアルで、50年以上にわたり親しまれてきた「大多喜ハーブガーデン」の歴史と魅力を受け継ぎながら、ガーデンハウスやレストラン、ライフスタイルショップを備えた複合施設へと生まれ変わりました。広大な敷地は、約6000平方メートル。植物だけでなく、食、建築、プロダクト開発、農業、染織など多様な領域のクリエイターが参画し、「育てる」と「使う」を隣り合わせに実践していく“みんなの庭”を目指しています。
目線と距離を変えて、植物と向き合う「内庭」
まずご紹介したいのが、温室エリア「内庭」。10〜30℃で育つ常緑の有用植物を中心に構成され、テーマごとに分けられたエリアで、香りや色、葉のかたちなどを五感で楽しめます。
内部には3つのリビングが設けられ、目線や距離を変えながら植物と向き合える工夫も。同じ温室の中でも、居場所が変わるだけで、植物の見え方や気配が驚くほど変わっていきます。名前や情報にとらわれすぎず、まずは直感で植物を感じてほしいという想いから、温室内にはあえて名札を設置していないのも特徴です。たまには理屈を手放して、新芽の美しさや葉の表情に静かに向き合う時間を過ごしてみるのもいいかもしれません。
香って食べる、旬の味覚
温室に併設する食堂は、味わいを通じて植物の魅力を確かめられる場所。園内や地元の素材をたっぷり使った料理が楽しめます。ハーブサラダや、野草・スパイスを組み合わせたグリーンカレー、豆乳を使ったビーガン対応のスープなど、どれも素材の魅力がまっすぐに伝わる一皿でした。ここで大切にしているのは、難解な料理ではなく、カレーやサラダといった日常的なメニューを入口にすること。ふと口にした瞬間に「いつもの味と少し違う」と感じる、その小さなずらしを植物でつくっているのだそう。
ドクダミ白茶やゲットウを使ったブレンドティーなど、園内で採れたハーブを使ったドリンクのラインナップも充実。
日々の食卓に取り入れたくなる、からだ想いの味わいに出合えます。
ショップには、オリジナルのボタニカルティーやスパイス、植物を活かしたヨモギクッキーなどのお菓子やグラノーラなど、植物苑での体験をそっと自宅に連れて帰れるような商品が並びます。さらに敷地内にある調香室〈セントリサーチ〉で生まれたオリジナルの香りが、ルームスプレーやディフューザーといったプロダクトに。温室の空気が香りと共に蘇ります。
ラボやガーデンセンターでは、阿波藍の作り手〈Watanabe’s〉による藍染や、自分だけの香りを形にするお香づくり、ブレンドティーの体験なども開催予定。さらに、植物の生育時期に合わせて、一部エリアの植栽は2026年4月1日(水)にかけて順次整っていくそう。
季節とともに少しずつ完成していく過程も、この場所の魅力のひとつになりそうです。香りや色を通して植物について触れる時間をぜひ味わいに訪れてみてはいかがでしょうか。
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