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乳房、大腸、胃、肺、子宮頸部。検診が有効ながんの最新知識。

  • 文・寺田和代

【肺がん】受動喫煙によるがんも増加。40歳以上は毎年検診を。

【肺がんとは】

肺の気管、気管支、細胞の一部が何らかの原因でがん化するもので、男女合わせると亡くなる人は全がん中、最も多い。8割以上を占める非小細胞がんと、小細胞がんに大別され、さらに前者は気管や入り口に多くできる扁平上皮がん、奥側に多くできる腺がんなどに分けられる。いずれも喫煙や他人の煙を吸う受動喫煙によって発症リスクが高まり、悪性度の高い小細胞がんはとりわけ喫煙との関連が指摘される。

【推奨される検診】

40歳以上、年に1度。亡くなる人を減らす効果が確認されているのは胸部エックス線検査に加え、喫煙者への喀痰細胞診だ。「煙の細かな粒子が肺の奥まで入り込むことによって、特に腺がんのリスクが高まります。受動喫煙による肺がんの年間死亡者数は約2500人で、女性の割合が高いデータも。喫煙可能な環境を削減することで肺がんで亡くなる人を減らせます」人間ドック等ではヘリカルCTを用いた肺がん検診が行われることもあるが、日本人での有効性は確認されていない。「CT検診では、治療が不要な微小な異変まで発見してしまう過剰診断の可能性も」

【子宮がん】直接細胞を採る、精度の高い頸がん検診は20歳から。

【子宮がんとは】

子宮の入り口(頸部)にできる子宮頸がんと、子宮体部の内膜から発生する子宮体がんの総称。頸がんは婦人科の診察やがん検診で発見されやすく、早期なら比較的治療がしやすい予後の良いがんと言われている。「頸がんの特徴は若い人に多いことです。性交渉で感染することが知られるヒトパピローマウイルスというウイルスが発症に大きく関わっているためです。性行為があれば誰でも感染の可能性がありますが、もし感染しても多くは症状がないうちにウイルスは排除されます。繰り返し感染した場合、がんが発生することがあるということです」一方の体がんは、肥満や出産経験がないなどで女性ホルモンの分泌量が多い中高年に多いとされる。

子宮頸部とは膣ではなく、外子宮口から奥の子宮の入り口部分をさす。体がんは子宮の内膜から発生する。頸 がんは30~40代に多く、体がんは50~60代がピーク。

【推奨される検診】

子宮頸がんの検診は20歳以上の女性で2年に1度、専門医による細胞診が推奨されている。「細胞を直接検査する感度の良い検診なので精度の高い結果が得られます」自己採取による検診は採取の不確実さなどからあまり勧められないそう。「体がんには有効な検診はなく、普段と違うおりものや不正出血などに気づいたらすぐに受診することが大切です」

発見困難ながんの最新情報。すい臓は血液検査が研究中。

発見が難しく、手遅れになることが多いとされるがんの最新情報は?「すい臓がんは血液検査でがんを見つける研究が進んでいます。アポリポプロテインA2アイソフォームという新しいバイオマーカーを用いた実験的すい臓がん検診が2017年7月から実施されています」卵巣がんは症状を自覚しにくく、有効な検診法もない。お腹の腫れや痛みなど自覚症状があればためらわず専門機関を受診してほしいという。

『クロワッサン』956号より

●若尾文彦さん 国立がん研究センター、がん対策情報センター センター長/2012年より現職。がんに関する正しい情報をわかりやすく発信するウェブサイト「がん情報サービス」(http://ganjoho.jp/)を運営。がんの悩みや相談は同サイトから、がん相談支援センター、がん情報サービスサポートセンターへ。

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