福田里香さんが訪問。奈良の石村由起子さんが改修した、野花に囲まれた小さな一軒家。
撮影・青木和義 文・大和まこ
吹き抜ける風が心地よい大きな窓の家は、まるで石村さんの集大成。
「このあいだ土地に出合ったって聞いたのに、もう完成したって、とても早い気がするんですけれど、どんな経緯で新しい家はできたんですか?」
と福田さんが尋ねる。
「70歳近くなる夫が、腰や脚の調子が悪くて段差がつらくなってきたうえに、私自身も4年前に股関節の手術をしたのね。今の家には玄関に階段があり、冬は凍ることもあって危険。それに60代になった今、人生の後半であることには間違いないから、残りの人生を穏やかで楽しいものにしたいと思ったことも大きいかな」
結婚して最初に住んだ大阪のマンションの次は、奈良と京都の県境にある一軒家、そして現在も暮らす石村さんのアイデアがふんだんに盛り込まれた奈良市内の一軒家と、移り住んできた。今回、改修した一軒家は長年にわたって支えてくれた夫への感謝の気持ちも込めたのだという。
多忙な仕事の合間に土地を探し、ここならば、という物件に出合った石村さん。改修を依頼したのは、かねて親交のある建築家・中村好文さん。梁など古い家の持つ雰囲気は残しつつも、大きく切り取られた窓からは広々とした庭が見渡せる。
「風が気持ちいい」。2人で話している間にも、しばしば風が通り抜けていくリビングダイニング。テーブルは香川に住む家具職人・松村亮平さんに別注したもの。夫のための飲み薬や新聞を入れる浅い引き出しがオーダーのポイント。
「この家は自然の中で暮らしているような心地よさがありますね。うらやましい」と、福田さんもすっかり新しい家の居心地に魅せられた様子。
「それに空間はもちろん、ここに置かれている道具や器などのセレクトも素晴らしい。好きなものって買った時がテンションの最高潮で、結局、使わなくなったりすることが誰にもよくあることですけれど、由起子さんの場合は常にそれを使い切るところをマックスにしている点がすごい。そういう意味でもこの家は由起子さんの集大成になる気がします」
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