くらし

小学生の女の子からの素朴な質問のこと。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

落語って、いつどこで生まれたのか正確なことは分からないそうです。職業としての落語家が誕生したのが江戸時代中期、寄席は江戸後期にできたであろうと言われています。それから明治・大正期に発達した落語は、その頃の社会状況や生活習慣を基本に成立していますから、現代では理解しにくい部分があるのも確かです。

私はただの気軽な娯楽だと思っていますが、人によっては“伝統芸能”“古典芸能”ととらえるのもうなずけるところです。

お客さまに分かっていただけない言葉としてよく引き合いに出される代表が「へっつい」……つまり台所で煮炊きする「かまど」でしょうか。それに江戸の通貨の仕組みがちょっと複雑とか、時間のかぞえかた……大人でも疑問がたくさんですから、子供さんにとっては相当「はてな?」なものなのでしょう。

以前ある高校ーーここは進学校で、高校ながらゼミがあり、私が呼ばれたのは何と「落語ゼミ」。しかも吉原を舞台にした廓噺『明烏』をやってくれという注文。心配しましたが、よく笑ってくれてーーそれはそれで心配ですけどーー終わったあと質問を受けつけました。廓についてはみんな予習済みで、出た質問はひとつだけ。「甘納豆って何ですか」……意表を突かれてびっくり。

先日は小学生の前で『寿限無』を演じたあと、一年生の女の子に「どうして名前が長いとコブがひっこんじゃうの」と訊かれ、たんこぶは時間が経つとなくなるから……と。「落語日和」に思わぬ冷汗をかいたのでした。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』1002号より

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