この前座の幽霊は、おどろおどろしい太鼓の鳴る中を舞台上からだけでなく、時として客席をさまよって皆さんを怖がらせます。ただし、そこが寄席のゆるさで、こういう緊迫した場面で往々にして失敗が起きたそうです。暗い中で衣装の裾を踏んづけて引っくり返り、幽霊が悲鳴を上げちゃったとか、火の玉を出したら幽霊のかつらに燃え移って炎上騒ぎ、果ては驚かしすぎてお客さまに殴られた……こうなると死者であるはずの幽霊が命懸けということになってしまいます。
現在は故・林家彦六師匠の芸を継承した林家正雀師匠が“怪談日和”な涼を皆さんに届けてくれますよ。