くらし

縁起かつぎで演じる 噺の理由をお教えします。│柳家三三「きょうも落語日和」

  • イラストレーション・勝田 文

寄席はお客さま商売、お一人でも大勢ご来場いただけるように“縁起かつぎ”をするというお話を何度か当連載でさせていただきました。開場のときに叩く一番太鼓は“どんどんどんと来い”と大入りを願い、お客さまと“縁の切れ目がないよう”と座布団は縫い目のない縁がお客さまを向くように高座に置く、などなどです。

そんな昔からの習わしのひとつに“演じるネタ選び”でも縁起をかつぐというものがありまして、縁起のいい落語の三大ジャンルが1.旅の噺 2.狐・狸の噺 3.泥棒の噺 とされています。もちろんそれぞれに理由があるんです。まず旅の噺、昔の旅は乗り物がほとんどありません。みなテクテク歩くしかないところで“お客さまが寄席へ足をはこんでくださる”ように願いを込めるのです。

次に狐・狸は人を化かします。“化ける”というのが寄席に思いがけず大勢お客さまが入ること、そしてくすぶっていた芸人が突然売れっ子になることの符牒なのです。最後の泥棒ネタ、お客さまのご贔屓と懐をこちらに“盗り込もう”という願いがあるんです。

もうひとつの縁起かつぎで演題の“字面の良さ”というのがありまして。真打昇進披露や襲名披露といったおめでたい興行では『寿限無』『松竹梅』という縁起のいいタイトル噺も好んで演じられ、盛り上がるようにと願いを込めます。『短命』という噺も披露興行のときだけ『長命』と書かせる師匠もおいでです(ふだんから『長命』の題名を使うかたもいますけどね)。こんなふうに縁起をかついで大勢のお客さまが「落語日和」を楽しんでくださるように祈っているんですよ。

柳家三三(やなぎや・さんざ)●落語家。公演情報等は下記にて。
http://www.yanagiya-sanza.com

『クロワッサン』997号より

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