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「旅」を読むと、旅を発見する――編集部

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、旅にまつわるブックガイドから、旅と読書に思いをめぐらせてみましょう。

文・澁川祐子

1978年7月25日号「あなただけの新しい旅の発見」より
1978年7月25日号「あなただけの新しい旅の発見」より

「旅」を読むと、旅を発見する――編集部

旅行記から旅の指南書まで、旅にまつわる本を集めたブックガイド特集。本を引用しながら、6ページにわたって読み応えのある文章が続きます。

「人はなぜ旅をするのだろうか」という問いからはじまり、異国でのマナーやコミュニケーションの取り方、買い物術や食べる楽しみ、旅の心得と、話題を変えつつ本を紹介。明治生まれの文豪・内田百閒の『阿房列車』や、映画監督・伊丹十三の『ヨーロッパ退屈日記』、英文学者・吉田健一の『私の食物誌』など、いまも読み継がれている名著も取りあげられています。

そんななか、ぐっときたのは永六輔著『遠くへ行きたい』から引用されたエピソード。永さんが、旅についていつも思い出す言葉として語った一節です。

スイスの高原を一人で歩いていたときのこと。心細くなって、行きあった家族連れグループについていきながら、「そっちへ行くとなにかあるんですか?」と質問したところ、返ってきたのが「あなたはなにもないと行かないのですか?」。

人は目的があるから旅に出るのか、それとも理由もなく旅に出たくなるものか。人によって答えはさまざまでしょう。そんなふうに考えさせられることこそ、まさしく<「旅」を読むと、旅を発見する>ことに違いありません。それは旅も読書も、ごく個人的な体験であることに起因しているからなのでしょう。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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