そこでとっさのアドリブ、たとえ落語の途中でも、鳴った音を物語の中で起きた出来事であるかのように扱ってうまく切り抜けることで、笑いと安心が生まれるのです。すると演者とお客席が不思議な一体感に包まれて、より盛り上がるという想定外な効果がある場合も!
前述のように考えるようになるまで紆余曲折はありました。以前は鳴ったとたんにやる気ゼロ、投げやりな高座を務めてしまいましたが、それではお客さまも自分も不幸です。
“災い転じて福となす”べく考えて、今は(1)鳴ったらすぐには反応せず、客席全体が認識するまでしゃべりながら待つ、(2)登場人物の行動の中でなるべく自然に電話にふれる。そして大事なのは(3)鳴らした人に恥ずかしい思いをしてもらう、ことも忘れずに。携帯の音で落語日和が台無しにならないよう、今はちょっとスリルある対処法を取り入れているんです。