そのある理由というのが、心とは裏腹に肉体が彼を受け入れ、彼を求めているから。ざっくり言ってしまうと「モラハラ夫だけどセックスがいいから別れられないの」ということだそうです、ハイ。
高貴な出の美人をめとりながらも足蹴にし、そのくせ「あいつはオレのセックスが最高だから離れられない」という設定のツラの皮の厚さに、なんだかすごくモヤモヤします。だってこれ書いたの、男だから。昭和の時代、男性の小説家と映画監督がこぞってこの手のストーリーラインを作り出し、女の不幸を美談調で描きまくった功罪を考えずにはいられません。現実の反映ならなおやるせない。
唯一の救いは上原謙の存在。一応三角関係なのですが、中性的というか、どう見ても女にさほど興味なさそう。「経済的に自立して離婚しなさい。別の男に泣きついても同じ目に遭うのがオチですよ」と、わたしが言いたいことを全部言ってくれたぁ〜。しかしお嬢様育ちで芯の弱い雪夫人に、それは酷なアドバイスというもので……。
演じる木暮実千代は「ヴァンプ女優」と呼ばれるほど、妖艶な悪女イメージが強い女優さんだったとか。それを知ってちょっとほっとしました。雪夫人も素敵だけど、口直しにヴァンプの方も拝みたいです!