くらし

【実家の建て替えを巡って弟と妹の板挟みに】読者の相続問題を、税理士が徹底解説。

  • イラストレーション・山下カヨコ 文・板倉ミキコ

【中島さんの回答】

財産放棄をする前に、家族全員での話し合いを。

「それぞれの今の生活環境、親や家に対する考え方も違うので、D恵さんが無理やりまとめようとするとこじれます。まずは妹と弟が一緒になる場を設け、財産に対する考えや、親の老後をどうするかをオープンにして、何度も話し合っていくべき。妹だけと話すより、弟を含めて全員で話したほうが一気に話は進みます」

ただ、マンションのローンが残った状態で、遺言もなく父親が亡くなった場合、相続放棄をしないと、D恵さんも妹も借金の債務者に。

「でも、負債を負うことは確実ではない。現状父親が存命で、闘病中でもないなら、まずは話し合いを。そもそも、弟が親の世話を本当にしてくれるかわかりません。最悪、姉たちが財産放棄をしたのに面倒を見ないなんてことも。そこを妹さんは心配しているかもしれません」

さらに、きょうだい間だけでなく父親との話し合いも必須。

「相談もなく決めたことに、妹さんは納得がいかないのでは。『財産放棄』という言葉もとてもきつく、子どもとして正当に扱われていないと感じる人もいます。父や母の考えをしっかり聞き、両親は子どもたちを平等に考えている、ということがわかれば、妹さんも落ち着いてくるでしょう」

生前贈与を行ったり、しっかりとした遺言書を作っておけば子ども同士のトラブルは減る。

「息子に家は継がせたい、でも他の子どもには金銭的な面で贈与を考えている、ということを示してくれれば、妹さんも今より納得いくはず」

生前贈与で相続財産が減るので、節税効果が高いのも利点。教育資金や住宅取得等資金など、様々な形で生前贈与に励む親も多い。ただ、超高齢社会の今、長い老後の生活資金繰りも重要課題だ。

「贈与しすぎて生活が苦しくなる例も。子ども側もその辺りを考慮して、親の財産と向き合いましょう」

《遺言書を残す意味》
相続人全員の合意がないと分割できない不動産は、親が事前に分割法を遺言書で示しておくと安心。ただ、それが逆に遺恨を生むことも。それぞれの子どもへの思いを書き記したり、不動産は一人に託すが、金融資産は他の子に、などバランスを取るのが理想。

贈与のいろいろ

●なんでも贈与
非課税贈与は年間110万円まで

●教育資金の非課税贈与は最大1500万円まで
(’19年3月31日まで。税制改正大綱では延長見込み)

●結婚・子育て資金の一括贈与は1000万円まで(※結婚は300万円まで)非課税(’19年3月31日まで。税制改正大綱では延長見込み)

●夫婦間贈与の特例では1回のみ、2000万円まで非課税贈与可能
(婚姻関係が20年以上で居住用不動産またはその取得のための金銭の贈与)

●住宅取得等資金に関わる非課税贈与は最大1200万円まで
(消費税8%の場合。住宅の性能や時期によっても異なる。消費税10%の場合、最大3000万円)
親・祖父母(直系尊属)→20歳以上の子・孫へ

●相続時精算課税累計2500万円まで非課税
60歳以上
の親・祖父母→20歳以上の子・孫へ
(相続が発生した時点で精算)

中島典子(なかじま・のりこ)●税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。広尾麻布相続センター代表。相続前後の幅広いアドバイスが好評。http://tax-money.jp

『クロワッサン』990号より

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