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【実家に身を寄せていたのは生前贈与?】読者の相続問題を、税理士が徹底解説。

お互いに言い出しづらい話題、「親のお金」のこと。しかし先送りすることにメリットなし。読者の実例をもとに税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーで広尾麻布相続センター代表の中島典子さんが解説します。

イラストレーション・山下カヨコ 文・板倉ミキコ

【中島さんの回答】

一般的な生活費なら問題なし。でも、感情論なので厄介。

生前贈与とは、生きているうちに財産を子や孫に渡しておくこと。遺産分割の際、特定の贈与に限っては無期限に遡って相続財産に加え、“遺産の前渡し”に当たるとみなす。特定の贈与とは、例えば、住宅取得等資金や結婚資金、独立開業資金など、高額な資金の贈与があった場合。その全額が相続財産に加えられ、遺産の分け前は減額される。これを“特別受益の持ち戻し”という。

「C代さんの場合は、一般的な生活費として援助してもらっていた範囲内なので、生前贈与の範疇に入らないと思います。シングルマザーで子どもの養育費にもお金がかかり、一人ではどうしようもない状況を、扶養義務者として父親が世話をしてあげていたというケース。一般的な生活費や学費であれば、法的には問題ないでしょう。ただ援助金額が異様に高かったり、収入があるのに親にあらゆる支出に関して頼り切っていたのであれば、勘案されることも」

一方で、姉の感情も考慮すべき。

「離婚してシングルマザーになったのはC代さん自身の問題で、10年間も生活費全てを親に負担させたのはおかしい、とお姉さんが不満に思ったとしても仕方ありません。姉が強硬な態度に出るのは、長年蓄積した思いがあったからかも。感情問題なので、話し合いで折り合いをつけたほうがいいし、姉の言い分をしっかり聞き、C代さんも引くところは引いてもいいと思います」

それでも解決しないなら、調停や審判などの裁判に持ち込むしかない。

「調停や審判では、きちんと10年間遡って、どれくらいの贈与額があったかを計算し、法的な判断を導いてくれるでしょう。ただ、そこまで行ってしまうと、きょうだいの関係は断絶しがち。時間や労力がかかり、精神的ストレスも相当です。法的手段を取る前に、相手の考えにも耳を傾ける心の余裕を持ち、意地を張らずに話し合いを重ねてほしいです」

こじれた相続問題を解決する法的手段

●調停
家庭裁判所において、2名の調停委員(嘱託を受けた弁護士など)が中心となり、相続人から個別に意見を聞くなどして協議し、分割方法を決めていく手続き。話し合いが基本なので、相続人の中で1人でも合意しなければ、その遺産分割調停は不成立となる。

(それでも決裂したら…↓)

●審判
調停でも話がまとまらない場合は、家庭裁判所の裁判官の審判に委ね、財産の分割方法が決まる。最終意思決定は裁判官にあり、結審内容は強制的に施行される。話し合っても合意できる見込みがない場合は調停をせず、いきなり審判を申し立てることも可能。

※民法改正により、2019年7月より遺留分算定(相続人が被相続人から相続できる最低限の権利の金額の算定)においては、原則10年の遡りになる。

【実家に身を寄せていたのは生前贈与?】読者の相続問題を、税理士が徹底解説。

中島典子(なかじま・のりこ)●税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー。広尾麻布相続センター代表。相続前後の幅広いアドバイスが好評。http://tax-money.jp

『クロワッサン』990号より

02 / 02

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