贈りもののときに気をつけたい、基本的なマナーとルール。
撮影・黒川ひろみ イラストレーション・いぬんこ 文・小沢緑子
贈りものをする際の大前提は、相手が貰ってうれしいもの、逆に困るものをあらかじめ把握しておくことだという。
「辛党に甘いもの、あるいは健康に気遣う人に、その人が避けているものをあげても困るだけ。日頃のやりとりで好みや生活習慣を窺い知ることができますから、普段から相手に関心を持ち、情報収集をしましょう」と、マナーデザイナーの岩下宣子さん。
また、本来はマナー違反でも、理由次第では失礼にならないこともある。
「目上の方に肌着や靴下を贈るのはマナーに反しますが、それが上質でつけ心地もよく、相手のことを本当に考えて選んだものなら『私が使用してよいものだったのでお試しいただきたくて』と、理由を添えればよいのです」
贈りものの基本は、相手を思いやること。お決まりではなく「互いに気持ちよく」がマナーと心得て。
【訪問時】風呂敷で包むのが基本。和室では正座、洋室では立ったまま渡す。
「最近は紙袋のまま持っていく人も増えてきましたが、本来、贈りものを相手のお宅に持参するときは風呂敷で包みます。もっとも格式が高い包み方が、結び目を作らない平包みです」
渡すタイミングは玄関先ではなく、部屋に案内されて席につく前に。
「和室では“目線が上”にある側が上の立場になります。部屋に通されたら入り口近くの下座に正座をし、まずは丁寧に挨拶をしてから、風呂敷から品物をさっと取り出して。解いた風呂敷は小さくたたみ、畳の上で品物を回転させて正面向きにして渡します」
洋室の場合は、“座ったラクな姿勢”をとる側が上の立場になるので、部屋に通されたら椅子に座る前に。
「『椅子をお借りします』とひと言断ってから、その上に風呂敷包みを置いて、やはりさっと品物を取り出します。お渡しするときは立った姿勢のままで」
風呂敷ではなく紙袋で持参する場合も、渡し方は同じ要領でよい。
「紙袋も風呂敷もホコリよけなので、品物を取り出して渡したら持ち帰るのが基本です。ただ、なかには相手が欲しいと思うような素敵なデザインの紙袋もあるでしょう。そのまま渡したいときは『紙袋のままで失礼いたします。もしよかったら紙袋は捨てていただけますか』と、ひと言添えればマナー違反になりません」
ちなみに風呂敷は1枚持つならどんな場面でも通用する正絹の紫の無地が重宝するが、さまざまな柄を使い分ける楽しさもあるという。
「たとえば、11月なら菊や椿、新年なら松や梅など、季節に合わせた柄に包んで持参すると風呂敷から取り出すときの気の利いた演出になりますし、贈る側も風呂敷を使うことが楽しみになってきますよ」
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