【正月編】正月を豊かにする、7つの暮らしの風習。
撮影・広田行正 文・大澤はつ江
3. 万両や千両など赤い実のなる植物を飾る。
冬に赤い実をつける万両や千両で縁起を担ぐ。
正月の生け花などに使われる万両や千両は、冬でも実がなることから“身が成る”の語呂合わせで、縁起の良い植物とされている。
「万両、千両のほかに、百両、十両、一両とあり、実の数で名称が異なるようです。その花言葉を見ると、固い誓い(万両)とか、富貴(千両)、富や財産(百両)とあり、富に関係するので、縁起を担いで飾るといいですね。私はあまり仰々しい生け花ではなく、1枝をカップにさりげなく。赤い実があるだけで場が華やぎ、新春を寿(ことほ)ぐ雰囲気に。干支飾り同様、元日の朝に庭になっている千両を手折り、食卓などに飾ります」
万両と千両の見分け方だが、実が葉の下に垂れ下がるようになるのが万両、葉の上に実がなるのが千両だ。
「どちらも趣がありいいですよ」
4. 若水を汲む。
若水の力を使って邪気や穢れを払い、身を清める。
元日の朝に初めて汲む水を若水(わかみず)といい、お正月の神様にお供えした後、その水を飲み、食べ物を調えた。
「今の暮らしでは、湧き水も近くにありませんし、井戸もない。でも、若水を飲むことで邪気を払い、穢れを清める風習は大切にしたいと思っています。例えば、輪飾りを施した水道の蛇口から、大きめの器に水を入れ、柄杓の柄に半紙を巻いて麻紐で結び、松葉を添えたもので汲めば、現代版の若水に。一口、飲むだけで清々しくなり、身が引き締まります」
5. 冬の花を飾り、香りを楽しむ。
かすかに香る花飾り。心が満たされ豊かに。
「清められた部屋が、爽やかな香りで満たされることほど、豊かな気持ちになることはありません。人工的なものではなく、自然の中にいるような、かすかに香る花の匂い……。冬に花が咲く水仙は正にピッタリ。凛とした品のよい香りが特徴です。1本活けるだけで効果的」
正月は来客の多い時期でもある。
「香りの好みは人それぞれ。だからこそ不快感を与えないよう注意したいものです。ほのかな香りでおもてなしをするのが大切なことですから」