「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】
監修・千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館館長) 文・石飛カノ コラム取材協力・吉野敏彦(『フジテレビジョン』シニアプロデューサー)
【9/35】日本初公開 取り持ち女
今回、東京で行われる展覧会での展示は最初は8点の予定だった。急遽、新たに加わったのがこちら、日本初公開の初期作品。
左から2番目の取り持ち女が、右端の娼婦を男にあてがう様子を描いている。一説には、聖書にある「放蕩息子」をモチーフにしているという意見もあり、宗教をベースとした物語画から風俗画へ移行しつつあったフェルメール過渡期の作品という見方も。
左端のこちらを見ている男性はフェルメール自身ではないかと指摘する研究者もいる。
フェルメールの自画像?
「恋愛はオランダの風俗画では大事なテーマ。それにはふたつあり、恋人同士の恋愛、もうひとつは売り買いできる愛でした。左の男がフェルメールではないかという説は、男が1人だけ絵の外を見ているから。ルネッサンス絵画では絵の端で1人だけ絵の外を見ている人物は自画像であることが多かったのです」(千足さん)
【10/35】恋文
手前の暗所から光の差し込む奥の部屋を覗き見するような構図。フェルメールにしては珍しいが、同時代の他の風俗画家がよく用いた構図だという。
恋愛を暗示するリュートを持つ女性がメイドから手紙を受け取る。画中画の1枚には帆船が描かれていて、これは遠方にいる夫か恋人からの便りが来たという想像をかきたてる。
画面手前にはスリッパやほうき、くしゃくしゃになった楽譜などの小道具が配置され、フェルメール作品中では饒舌さが際立つ。
背後には貴重な風景画が。
「縦に仕切られた空間から奥を覗くというドラマを見るような構図は、オランダ絵画が得意とするところ。フェルメールはさらに距離を置き、2人の声が聞こえるか聞こえないかという演出をしています。画中画はフェルメールの手による貴重な風景画。細部まで丁寧に描かれているので、注目してみましょう」(千足さん)
千足伸行(せんぞく・のぶゆき)●成城大学名誉教授、広島県立美術館館長。TBSを経て国立西洋美術館に勤務。ドイツ留学後、成城大学文芸学部教授に。2011年より現職。美術評論の著書多数。
フェルメール展
【東京展】
2018年10月5日(金)〜2019年2月3日(日)
上野の森美術館
9時30分〜20時30分(開館・閉館時間が異なる日があります)
12月13日休館
前売日時指定券:一般2,500円/大学・高校生1,800円/中学・小学生1,000円
問合せ TEL:0570-008-035
www.vermeer.jp/
【大阪展】
2019年2月16日(土)〜5月12日(日)
大阪市立美術館 9時30分〜17時
月曜休館(祝日は開館)
一般1,800円/大学・高校生1,500円/中学生以下無料(前売および20名以上の団体料金は200円引き)
問合せ TEL:06-4301-7285
www.vermeer.osaka.jp/
『クロワッサン』983号より
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