「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】
監修・千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館館長) 文・石飛カノ コラム取材協力・吉野敏彦(『フジテレビジョン』シニアプロデューサー)
【4/35】日本初公開 ワイングラス
初期から中期へと差し掛かる時期に描かれた、日本初公開作品。テーブルの上には楽譜、椅子の上にはリュートが置かれていて、2人が恋愛関係であることが暗示されている。
半開きになった窓のステンドグラスには馬具を持った女性が描かれていて、これは「節制」を表しているという説もある。当時のオランダの国教はプロテスタント。自分の裁量で贅沢をすることは許されたが、一方で自分をよく律し、過度な欲望を節制することが求められていた。
音楽は恋愛の寓意。
「楽器は恋のムードを高める小道具として好まれていました。ワインもそう。ほろ酔い加減になった女性が男性になびいていくのではないかと想像させるこの作品は、フェルメールにしては珍しくストーリーテリング的。でもこれが、当時の風俗画のパターン。彼が生涯描かなかった自然風景の画中画も、見どころのひとつです」(千足さん)
【5/35】手紙を書く女
郵便制度が発達した17世紀オランダでは、一般市民の間で盛んに手紙がやりとりされた。それだけに手紙をモチーフにしたフェルメール作品は6点ある。その中で唯一、人物が見る側に視線を向けている作品がこちら。
画面の左側からやわらかい光が差し込み、その光を浴びる単身の女性像。まさにフェルメールの十八番。光は女性が身につけた真珠のイヤリングや机に置かれた小物や椅子の鋲に達して反射する。画中画にはヴァイオリンに似た弦楽器が描かれている。
絵と鑑賞者が視線を交わす。
「女性1人の構図ですが、面白いのは、画中に描かれた人物のアイコンタクト。それだけで鑑賞する側と絵との関係性ができます。ドアが開いたのか、足音がしたのか、そんな状況を想像させる。そして黄色のマント。これに近い衣装がフェルメールの財産目録にあったという話も。卓上の真珠も彼が好んで描いたモチーフです」(千足さん)
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