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「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】

東京展、大阪展、それぞれで公開される絵は? 見どころを押さえておけば楽しみも倍増。美術評論家の千足伸行さんのワンポイント解説もぜひ参考に。

監修・千足伸行(成城大学名誉教授、広島県立美術館館長) 文・石飛カノ コラム取材協力・吉野敏彦(『フジテレビジョン』シニアプロデューサー)

【2/35】マルタとマリアの家のキリスト

マルタとマリアの家のキリスト 1654-1655年頃 スコットランド・ナショナル・ギャラリー National Galleries of Scotland, Edinburgh. Presented  by the sons of W A Coats in memory of their father 1927 東京展、大阪展
マルタとマリアの家のキリスト 1654-1655年頃 スコットランド・ナショナル・ギャラリー National Galleries of Scotland, Edinburgh. Presented by the sons of W A Coats in memory of their father 1927 東京展、大阪展

縦158.5×横141.5cm。フェルメールの初期作品で、かつ最も大きな絵画。
右に座っているのはキリスト、中央はかいがいしく家事をするマルタ、左には座ってキリストの教えを聞こうとするマリア。キリストがマルタをたしなめている場面。
画家として出発した当初、フェルメールはこのような聖書の一場面を題材にした宗教画を描いていた。当時、イタリアのバロック様式を確立した宗教画家、カラヴァッジオの影響を受けて描いたとされている。

三角形の構図には流れが。

「当時、ヨーロッパの宗教画ではよく描かれていたテーマ。フェルメールには珍しく明暗がはっきりしています。カラヴァッジオの画風の影響を受けていると考えられ、興味深いですね。構図的には中央のマルタが頂点になった三角形で安定していて、キリストがマリアを指さしていることで見る者の視線の流れを促します」(千足さん)

「フェルメール展」来日する作品は、ここを見逃さないで!【美術評論家のワンポイント解説付き】

【3/35】手紙を書く婦人と召使い

手紙を書く婦人と召使い 1670-1671年頃  アイルランド・ナショナル・ギャラリー Presented, Sir Alfred and Lady Beit, 1987 (Beit Collection)  Photo © National Gallery of Ireland, Dublin NGI.4535 東京展、大阪展
手紙を書く婦人と召使い 1670-1671年頃  アイルランド・ナショナル・ギャラリー Presented, Sir Alfred and Lady Beit, 1987 (Beit Collection) Photo © National Gallery of Ireland, Dublin NGI.4535 東京展、大阪展

寡黙にして動きは最小限。時が止まったような厳粛な瞬間をすくい取るフェルメール作品。その真骨頂が発揮された、後期作品の中で最も独創的な作品のひとつ。
前のめりで手紙を書く女主人の背中越しに、窓の外をぼんやりと眺めるメイド。床には、開封された手紙、この時代の手紙のやり取りで使われたであろう赤い封蝋が落ちている。
後ろの画中画は、モーセがエジプトで人種の違う敵対する者を和解させる旧約聖書の一節。すべてがミステリアスな雰囲気。

画中画に込められた意味。

「自分の世界に集中して沈潜する人物描写はフェルメールの好んだテーマ。メイドは所在なげに窓を見ていますが、窓は素通しではないので外は見えません。床の手紙は男性からのもので、気に入らずに丸めたという見方があります。一方で、画中画のモーセは“友愛”や“和解”を表すことから、男女の和解を暗示しているとも」(千足さん)

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