くらし

セクシャリティとは、やはり人間関係なんだ――石川弘義(成城大学教授)

1977年創刊、40年以上の歴史がある雑誌『クロワッサン』のバックナンバーから、いまも心に響く「くらしの名言」をお届けする連載。今回は、社会心理学者の言葉からセクシャリティの本質を考えます。
  • 文・澁川祐子
1977年11月号「SEXへの知的探検」より

セクシャリティとは、やはり人間関係なんだ――石川弘義(成城大学教授)

ウーマン・リブ運動が起き、女性が自らの性を語りはじめた1970年代。アメリカでは性意識と性行動を調査した「ハイト・リポート」が発表され、日本でも1977年に女性編の翻訳が出版されました。

時を同じくして創刊したクロワッサンでも、性に関するテーマを積極的に扱っています。その一つが、創刊時からスタートした社会心理学者の石川弘義さん(1933-2009)の連載です。

出版されたばかりのハイト・リポートを読み解いたり、性的マイノリティを取りあげたりと、性の問題に毎回深く切り込むこの連載。7回目で印象的なのは、アメリカの不感症の女性の例です。

彼女の治療にあたった友人の精神科医は、催眠暗示や精神分析療法などを試してみましたが、どれもうまくいかない。あるとき思いついて、「料理学校に通ってみたら」とアドバイスしたところ、それに従った彼女は何か月かのち、恋人とうまくいくようになり、セックスでも感じることができるようになったといいます。

石川さんはこの事例に対し、<キッチンでいろいろとこったお料理をつくり、それを恋人といっしょに食べる。これは、実は人間関係についての訓練だったのです>と解説します。

セクシャリティはつまるところ、人間関係である。シンプルな言いまわしながら、他者はみな異なる存在であることを思うとき、この言葉はずしりと重く響いてきます。

※肩書きは雑誌掲載時のものです。

澁川祐子(しぶかわゆうこ)●食や工芸を中心に執筆、編集。著書に『オムライスの秘密 メロンパンの謎』(新潮文庫)、編著に『スリップウェア』(誠文堂新光社)など。

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