くらし

地元のコミュニティFMは災害時の頼れるツール。│しまおまほ「マイリトルラジオ」

先日、テレビをつけると7月に起きた豪雨のニュースが流れていた。

VTRの後、司会の爆笑問題・太田光さんがこうコメントしていた。

「いま被災地が何を必要として、どんな事に困っているかを知るにはラジオがいい。日本のどこにいても地方局のラジオが聴けるようになったのだから」

8年前、父の故郷である奄美大島を豪雨が襲った。親戚、知人のほとんどが被災し、新築の家が土砂で流された人もいた。

その1カ月後、訪れた島で聞いたのは設立6年目であるコミュニティFM「ディ!」の活躍ぶりだった。

「ディ!」は、それまでラジオ局のなかった奄美に作られた初めてのコミュニティFM。パーソナリティーは地元に住む人々で、彼らは島口(方言)で世間話をしているみたいに自由におしゃべりをする。

そんな「ディ!」が豪雨の際の天気予報、被害状況、避難所の情報から物資について細やかにフォローし、それをきっかけに島での認知度と信頼を得たという。

たしかに被災以降、タクシーやバス(奄美では公共バスでラジオがかかっている)で「ディ!」を聴く機会が一気に増えた。

思えばわたしも東日本大震災の時、ラジオにはとても助けられた。災害についての情報はもちろん、ラジオの向こうにいる人たちと同じ時間、同じ放送を共有する安堵感があった。冗談や余談にさえ勇気付けられた。

もうあんな思いはしたくない。けれど、もし、また……そんな時わたしは迷わずラジオをつける。

しまお・まほ●エッセイスト、漫画家。1997年『女子高生ゴリコ』でデビュー。著書に『マイ・リトル・世田谷』。「『ディ!』は『おい!』『ねえ!』など掛け声を表現する奄美の方言です」

『クロワッサン』980号より

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