【後編】猫沢エミさんの「パンがある朝の食卓」。食べたいものは身体に訊く、 海苔たまサンドか苺タルティーヌか。
ひとりで暮らす東京で、毎朝食べるパンは心と身体の糧。大切な記憶を蘇らせ、今日の自分を励ましてくれるもの。
撮影・三東サイ
日本らしさを残しつつ、本場を 凌ぐブーランジェリーが誕生。
ところで、彼女が暮らす下町界隈に『ビーバーブレッド』という店が昨年11月にできた。いわゆる西洋系のパン屋さんが少ない地域だったのでうれしくて、よく通っているという。そこで、一緒に店を訪れ、プロデューサーの割田健一さんに話を聞いた。
「食に対して保守的な地域かと思いきや、そんなことはなく、おいしいものに対して貪欲なんです。江戸スピリッツなんですかね。量り売りをする大きなカンパーニュが初日に3台も売れて、ああ、こういう町なんだなって」
こぢんまりした店内にはスケートボードやレコードなどが置かれていて、
「ナチュラルテイストの店にところどころ、ちょっとおかしいでしょ。私が初めてここに来たとき、思わず割田さんに声をかけたのも、壁に書かれた、F.I.BJOURNALの山崎円城さんの詩を見つけたからなんです。私、ビートニク文学もストリートカルチャーも大好きなので」(猫沢さん)
「自分が中高校生だったころの青春の感じですかね。遊んでる感を出したくて」(割田さん)
なにしろ、社員5名に対してアルバイトが13名。
「ほかでいろんな仕事をしてる子が週に1、2日だけやってくるんです。パン職人だけを集めるより、いい刺激をもらえている気がします」(割田さん)
自由な雰囲気はパンにも。あんパンやクリームパンなど、いわゆる町のパン屋さん的な商品にも、ひとひねりが加えられていて思わず顔がほころぶ。
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