漫画家ほし よりこさんの、素敵な一筆箋活用方法
撮影・清水朝子
【漫画家 ほし よりこさん】手で書くものには、文面以外にも伝わるものがあると思っています。
人気の漫画家・ほしよりこさんは、漫画の中の文字もすべて手書きで仕上げている。書き文字自体に味があるから、一筆箋だって、そのままひとつの作品のようだ。
「手で文字を書いているとき、書いている内容とともに、必ず相手のことに思いを巡らします。それが私にとって、大切なものを相手に送るときの儀式のような行為になっているんです。手で書くものには、意識していること以上にたくさんの情報が詰まっている。文面以外に伝わるものがなにかしらあると思っています」
関西在住のほしさんは、都内の出版社に原稿を頻繁に送るようになってから、一筆箋を活用するようになった。上の写真も、雑誌社に原稿を送るときのもの。「簡単な絵日記のようにシンプルで品があるところが気に入っている」という鳩居堂の用紙を使い、ひとコマの絵も添えられて、ファンにはたまらない一筆箋だ。万年筆はドイツの筆記具ブランド・ラミーの限定品。『きょうの猫村さん』を最初に書籍化したときの担当編集者から、赤いボディに赤いグリップの〈サファリ〉をプレゼントしてもらって以来、使い続けている。写真の白いボディのものはこの春に復刻発売された地域限定品だ。
「万年筆はいつか欲しいと思っていましたが、あまり重厚感のあるものは苦手で。ラミーは、シンプルで持ちやすく書き心地もいいので、一気に愛用品になりました。配色の絶妙さも魅力なので、定番のアルミグリップでは少し物足りなくて、たまに発売になる限定品の赤いグリップは本当にかわいい」
ほしさん自身、かわいらしいはがきはもちろん、付箋などでも手書きのメッセージをもらったら、部屋の壁などに貼っているという。
「とくに母からの手書きのメッセージは言葉が古風で、なるべく内容を丁寧に伝えたいという気持ちが届いて深い愛情を感じます。なにげない言葉も読んでいると心が落ち着くので、冷蔵庫に貼って、なんとなく心がすさんでいるなというときに読み返しています」
小さな手書きのメッセージがもたらす、大きな影響力は計り知れない。
ほし よりこ●漫画家。小社刊の漫画『きょうの猫村さん』が大人気。現在は、雑誌『カーサブルータス』で「カーサの猫村さん」を連載中。
『クロワッサン』975号より
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