1977年8月号では、夏の号にふさわしく、カレーを大々的に特集。ホテル・オークラの初代総料理長となり、日本におけるフランス料理の普及に尽力した小野正吉さん(1918-1997)が、本格的なカレーのつくり方を披露しています。
名言が出てくるのは、その特集内の「小野正吉さんのカレー談義」という談話ページ。14歳で料理の道に入った小野さんにとって、カレーは思い入れのある料理。当時、最高級のレストランだった修業先で食べたカレーのうまさがいまでも忘れられないといいます。
そんな小野さんにとって、<カレーっていう料理は、やさしいようで難しいやね>。調理中は、調味料や材料を<パッパッとすばやく、しかもかなりいいかげんに入れて>いき、<ときどき指につけてナメてみて、また味を足す>という手際のよさ。横で分量をメモしようと、小野さんの手先を見つめていた料理担当編集者もお手上げのもようです。
<ホテルみたいに何百人分も作る場合は、必ずレシピー(処方)が必要だよ、だけどそれはあくまでも基準なんだから>
そう語ったあとのひと言が、切れ味のよい今回の名言。自分の舌でそのつど確かめながら、最上の味をつくる。超一流の料理人ならではの真摯な姿勢が、この飾らない言葉には込められています。
※肩書きは雑誌掲載時のものです。