「ボウリングの球を思いっきり転がす感じです。最初に勢いがないと駄目。この書き出しの部分だって、誰が何のために言っているのか、書いている本人にもその時はわかっていませんから(笑)」
場当たり的ともとれる発言だが、もちろんそれではこんな大作を生み出すことはできない。
「書き進めば書き進むほど目の前がライトで明るく照らされるというか……」。つまり、50ページにたどり着いたら、その50ページと相談をしながら次の51ページを書くのだという。次の一文はそれまでに書き進んだ分の必然性が導いてくれる。もともと予定調和の小説が好きではない。
「一人の人間が頭で考えていることなどは読者だって見通してしまうのだと思う。であれば、個人の力を超えて、小説の力を借りて書くものでなければ、本当の意味で読者を驚かすことなどはできないのではないかと」