人情の町・大阪の代名詞。泣いて笑える松竹新喜劇が、創立70周年記念公演。 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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人情の町・大阪の代名詞。泣いて笑える松竹新喜劇が、創立70周年記念公演。

  • 文・一澤ひらり

大阪で生まれ育った劇作家・わかぎゑふさんにとって懐かしい子ども時代の想い出は、半日で学校が終わる土曜日のお昼。帰宅すると同じ時間に競い合ってテレビ放送していた松竹新喜劇と吉本新喜劇の舞台を観ることだった。

「松竹はストーリーがきっちりある人情喜劇。吉本はにぎやかに笑わせる超絶技巧のお笑い。子どもには吉本のほうが楽しいんですけど、うちの父は“ちゃんとお芝居を観なさい”と松竹贔屓だったし、祖母は藤山寛美さんの大ファン。なので、子どものころに最も影響を受けた大阪弁の芝居は松竹だったんです」

「峠の茶屋〜」の原題である「七両二分」。長兵衛を藤山寛美、おかんを曽我廼家鶴蝶。昭和48年、新橋演舞場。

その松竹新喜劇が今年で70周年。ことに藤山寛美は爆発的人気を博したが60歳で亡くなり、現在は3代目渋谷天外が座長となって一座を率い、髙田次郎、小島慶四郎などベテラン団員と共に、寛美の孫・藤山扇治郎も加わって劇団を支えている。

「大阪人は笑うのも好きだけど、泣くのも好き。泣いて笑うのが大好きなんです。そこにどっぷり浸れるのが松竹新喜劇。泣かせるシーンで笑わせるのがいいんです」

「人生双六」。藤原寛美の名演技で当たり役となった。昭和61年、大阪・中座。

なかでも今回の「創立70周年記念公演」の演目の一つ「人生双六」は、名作中の名作として知られてきた。失職して悩む浜本が大金の入った財布を拾うが、知り合った失業中の宇田に打ち明けると、落とし主に返したほうがいいと諭され、届けることに。2人は5年後に同じ場所で逢おうと約束して別れるが……。

「約束の日、2人はどうなったかっていうお話なんですけど、まさに人生は双六。世の中捨てたもんじゃないっていう人情劇の王道みたいな話です。泣いて笑って、笑って泣ける。初めて新喜劇を観る人にとっては、すごくいいお芝居です」

漫才みたいで可笑しい大阪弁のやりとりの奥の、心のひだの触れ合いに癒やされて笑える人情喜劇だ。

わかぎゑふ●劇団「リリパットアーミーⅡ」座長。7月3~8日、ザ・スズナリ(東京
・下北沢)で上演される、『眠らぬ月の下僕』を作・演出。

【 新橋演舞場七月公演 】
劇団創立70周年記念公演
 『松竹新喜劇』
「人生双六」「70周年御礼 口上」「峠の茶屋は大騒
ぎ!!」を上演。7月13~22日。昼の部(11時開演)、夜の部(16時開演)あり。1等席1万2000円ほか。昼の部、夜の部共に午前10時から当日券を発売。問合せ:チケットホン松竹0570-000-489

劇団代表の3代目渋谷天外(右)と、藤山寛美の孫で期待のホープ、藤山扇治郎(左)。

松竹新喜劇とは

明治期に歌舞伎から転身し、上方喜劇を創った曽我廼家五郎・十郎の一座の流れを汲んだ、喜劇各派が集結して1948年に結成。物語性の濃い笑いと人情が詰まった喜劇が特徴。

『クロワッサン』976号より

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