くらし

価値観の違う夫を自分のペースに引き込みたい。【専門家がアドバイスする夫婦の悩み相談】

「離婚したい」「自立して卒婚」「夫のこんなところが嫌」……。読者の悩みに医師の石蔵文信さんと臨床心理士の信田さよ子さんが答えます。
  • 撮影・森山祐子(信田さん) 文・後藤真子

価値観の違う夫を自分のペースに引き込みたい。(49歳)

夫が嫌い、とかそういう気持ちはありません。ただ、価値観があまりに違いすぎます。たとえば旅行。紅葉を見るついでに、ちょっとした低い山で山登りなんていいなあ、と私。夫は、山を登るならからだを鍛え、訓練を積み重ね、これなら登れるという自信をつけて槍ヶ岳を登るのが登山だ、山を登るとはそういうことだ、と。まるで違いすぎます。だからといって、私一人で気軽に……と、出かけられません。出かけにくいです。
だからといって卒婚なども考えていません。相手に悟られないように、現状を変えるために立ち向かいます。自分の考えを前面に出して立ち向かうと相手も意固地になるので、時間がかかっても夫を私のペースに引き込みたい。そのすべを考えています。

石蔵さんのアドバイス

人には好みやペースがあり、夫婦で同じはずがありません。あなたが夫のペースに引き込まれるのが嫌なように、夫もあなたのペースに引き込まれるのは嫌なはずです。夫婦一緒にいるのがベストではありません。世間体など気にすることなく、お互いにひとりの世界を大切にして、時々一緒に食事や旅行をするくらいがちょうどいいのではないでしょうか。

信田さんのアドバイス

価値観という言葉がたびたび出てきますが、今の若い人はあまりこの言葉を使いませんよね。価値観という言葉を使うこと自体がこの世代特有の価値観にとらわれているんじゃないかな。この人の悩みは、価値観の違いというふうに整理しないほうがいい。人間はみな違っていて、人生にもその人なりのやり方があるということです。もうひとつの問題は、「夫を置いて出かけるのはまずい」という考えです。おそらく夫に話したら「なに、それ?」って言うんじゃないですかね。彼女自身が「結婚したら女性はこうあるべき」という観念にとらわれていることに気づいて、それに関係なく行動できるようになるといいですね。

石蔵文信(いしくら・ふみのぶ)● 大阪大学人間科学研究科 未来共創センター 招へい教授。循環器専門医。心療内科医。定年後男性の生活自立を目的とした料理教室を開催。著書に『なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか』(幻冬舎新書)ほか。
信田さよ子(のぶた・さよこ)● 臨床心理士。’95年、原宿カウンセリングセンターを設立。依存症、DV、アダルトチルドレンなどの問題に取り組んでいる。著書に『家族収容所―愛がなくても妻を続けるために』(河出書房新社)ほか。

『クロワッサン』964号より

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