こう聞くと、なにやら真面目な社会派小説かと思ってしまうが、さにあらず。次々と降りかかるPTA絡みの無理難題に心折れそうな鶴子はご年配キラーのロックミュージシャン、フジマサキの虜になっていくのだ。家族には内緒で、ずぶずぶはまっていく様子のイタいけれどもまあ楽しそうなこと。
「私も好きなライブを目標に仕事を頑張るタイプなので。大変になればなるほど現実逃避したくなるんですよね。PTAの話だけだと暗いので入れたのですが、書いているうちにどんどん興がのって」
このフジマサキ、ライブビューイングとメッセージ動画のみで露出する、謎に包まれた存在なのだが、とにかく、歌が奇天烈で最高。ほうれい線について♪レイホーレイホー♪と歌い上げたり、♪パァステェを茹でるのさ そしてトゥラコとあえてしまうのさ♪と、楽譜はなくとも、ページをめくれば歌声が聞こえてくるかのよう。
「執筆の際は、耳で聞いてもわかるよう、意識して言葉を選んでいます。講談のリズムがしみついているのかも。お客さんを退屈させたくない気持ちも強いんです」