今作が凡百の不倫ものと一線を画しているのは、やはりきわの人物造形にあります。女でありながら家業を支える重圧をまるで感じさせず、溌剌と好きな仕事に打ち込んでいるきわの働きぶりは、見ていてとても気持ちがいい。商売上手でするすると東京進出を成功させるも、近江屋の誘いを断ったことでひどい意趣返しをされるといった、女性が働くことの困難さも描かれます。同時にこの場面は、五社協定によって映画界から追放された山本富士子その人の苦難も、重なって見えるよう。そしてきわがラストにくだす決断もまた、毅然としてフリーの道を選び、ドラマや演劇の世界で活躍をつづけた女優山本富士子のそれと、重なって映るのです。
丹念な京都ロケも素晴らしい本作。鈍色の瓦屋根が連なり、市電の走っていた京都を堪能しつつ、強く気高い京女の生き様にしびれること必至です!