「はるか昔、高貴な人たちが吉野、宇陀で薬草を摘む“薬猟(くすりがり)”をしたことが日本書紀にも書かれています。ここは古代人にとって再生の地でしたし、実際に山守の方と山を歩きまわって、幻の薬草のイメージが膨らんでいったんです」
映画では薬草の謎と共にさまざまな愛の形や命の在りようが描かれる。
「ジュリエットには2人の子どもがいるし、私にも息子がいてほぼ同世代。50歳前後の女同士の共感もありましたから、いろんな思いを共有できたんです。彼女は山深い宿坊で寝泊まりして、森の精気を肌で感じながら主人公のジャンヌそのものになっていましたね」
太古の森の幻想的な映像美は河瀨さんならでは。観る者の感性までも研ぎ澄まされる。