【河瀨直美さんインタビュー】幻の薬草を探して訪れた吉野の森で、フランス人女性が向き合う再生の物語『Vision』。 | アートとカルチャー | クロワッサン オンライン
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【河瀨直美さんインタビュー】幻の薬草を探して訪れた吉野の森で、フランス人女性が向き合う再生の物語『Vision』。

  • 撮影・青木和義 ヘア&メイク・砂川恵子(資生堂) 文・一澤ひらり

山が荒れている。その危機感がこの映画の出発点。

ジャケット参考商品、パンツ2万9000円(共にアニエスベー電話番号03-6229-5800)

世界で高い評価を受ける河瀨直美監督が、奈良・吉野の美しい森を舞台に命の在りかを問う最新作『Vision』。フランスの名女優ジュリエット・ビノシュ、河瀨監督作品『あん』『光』で主演した永瀬正敏、存在感が際立つ2人のダブル主演が実現した。

「私は奈良の山々を撮ってきましたが、今回は吉野の神秘的な森を舞台にしようと思いました。日本の原風景が色濃く残る場所ではあるけれど、後継者がいなくなり山が荒廃してきて、森への危機感があったからです。あの豊かな森を未来(ビジョン)へつないでいくことができるのか、と。ジュリエットが日本の奥深い森へ行くのが長年の夢だったと聞いて、心に抱いていた思いが一挙に動きだした感じですね」

と語る河瀨さん。物語はフランス人のエッセイスト(ジュリエッ ト・ビノシュ)が、人間のあらゆる精神的苦痛を取り去ることができるという幻の薬草“ビジョン”を探すために、吉野へやってくるところから始まる。山奥の森で暮らす寡黙な山守の男(永瀬正敏)と出会い、心を通わせていくが、果たして幻の薬草を見つけることはできるのか?

「はるか昔、高貴な人たちが吉野、宇陀で薬草を摘む“薬猟(くすりがり)”をしたことが日本書紀にも書かれています。ここは古代人にとって再生の地でしたし、実際に山守の方と山を歩きまわって、幻の薬草のイメージが膨らんでいったんです」

映画では薬草の謎と共にさまざまな愛の形や命の在りようが描かれる。

「ジュリエットには2人の子どもがいるし、私にも息子がいてほぼ同世代。50歳前後の女同士の共感もありましたから、いろんな思いを共有できたんです。彼女は山深い宿坊で寝泊まりして、森の精気を肌で感じながら主人公のジャンヌそのものになっていましたね」

太古の森の幻想的な映像美は河瀨さんならでは。観る者の感性までも研ぎ澄まされる。

「私たちは未来をどう生きてゆくのか。文明社会で欲望のままに生きていたら、やがては滅亡してしまうのではないかと思うこともあります。ビジョンは私たちがより豊かな次の世界に行くための扉。その扉を開きに劇場へ足をお運びください」

母として、女性として、出会うべくして出会った河瀨監督とジュリエット・ビノシュさん。

『Vision』
幻の薬草ビジョンを探して吉野に来たフランス人のジャンヌ。彼女が見出したものとは?
脚本・監督:河瀨直美 出演:ジュリエット・ビノシュ、永瀬正敏、岩田剛典、森山未來、夏木マリほか。6月8日より全国ロードショー公開。

河瀨 直美(かわせ・なおみ)●映画監督。生まれ育った奈良を拠点に映画を撮り続け、一貫してリアリティを追求。『萌の朱雀』『殯の森』『光』など、その作品はカンヌ国際映画祭をはじめ、世界各国の映画祭で数多くの賞に輝く。

『クロワッサン』974号より

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