スイスの自殺幇助団体を主宰する医師、エリカ・プライシックとの出会いを契機に、オランダ、ベルギー、アメリカ、スペインと国を跨いで宮下さんは安楽死を望む人々との面会を重ね、その死に立ち会う。死を執行する側の医師や反対派の人物とも対話し、各国の安楽死を巡る認定の条件や法整備などの現状を丹念に調査していく。そのなかで立ち上がって見えてくるのは欧米人の生き方そのものだ。
「彼らは常に個の人生を生きることが最優先です。またそれと同じくらいどう死ぬかということを真剣に考えている。それは哲学といっていいものです。ならば、彼らに安楽死の選択はあるだろうと思います。自分の望む死を遂げるために。もちろん、それは制度があってこそ実現できることですが」
そして、それをそのまま日本人に当てはめて考えるのは危険だと宮下さんは言う。