人生いろいろ、ヌードもいろいろ。 横浜美術館のヌード展│金井真紀「きょろきょろMUSEUM」
おっぱいにうっとりし、すね毛にギョッとする。
朝起きて、うろうろして、きょろきょろして、ふむふむする。日が暮れてビールをぐびぐび。そんなのんきなサイクルで生きているわたしが、ミュージアムを覗いてレポートする役目を仰せつかりました。どうぞよろしくお付き合いくださいませ。
さて、今回はヌードをきょろきょろしに横浜へ。考えてみれば、美術館って普段からヌードの彫刻や絵画が溢れている。あえて「ヌード展」と銘打って裸の作品を集めるなんて、逆にめずらしい企画だなぁ。
目玉はロダンの彫刻「接吻」。高さ1・8メートルの大理石像は、20世紀初めにイギリスで展示された際、「エロティックすぎる」とシーツで覆い隠されたとか。どんだけエロなんだろ……と楽しみに近づいてみる。が、うーん、今見ると別にエロくない。ロマンチックで柔らかい愛のかたちにしか見えない。ただ、これは夫の留守中に夫の弟とチューしてる場面(ダンテの『神曲』のワンシーン)だと知ると、なんだかドキドキしてくるのであった。
かつては神話や聖書を題材にしてしか描けなかったヌードは、どんどん解放され、多様になっていく。デイヴィッド・ホックニーが描く、ベッドに横たわるゲイカップルは静かで仲良しだったなぁ。ホックニー自身も同性愛者であることを隠さず生きている。いいねいいね。フェミニストの画家シルヴィア・スレイの油彩には、すね毛もじゃもじゃ男がどどん! わはは、インパクト強すぎ! 人生いろいろ、ヌードもいろいろ。さてと、帰りに銭湯でもいくか……。
金井真紀(かない・まき)●作家、イラストレーター。最新刊『パリのすてきなおじさん』(柏書房)が発売中。
『クロワッサン』973号より
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