捨てられないのは、もしや……「ためこみ症」とは何ですか?
撮影・岩本慶三 文・石飛カノ
2013年、アメリカ精神医学会の診断基準が19年ぶりに改定された。この中でひとつの病気として新たに位置づけられたのが「ためこみ症」。文字どおり、大量のものをためこむ疾患だ。臨床心理学の分野でこの研究に携わってきた五十嵐透子さんによると、
「ためこむという行為は、これまで強迫症の患者さんに見られるひとつの症状と考えられてきましたが、そうではないと今回定義されました。ADHD(注意欠如多動性障害)やASD(自閉症スペクトラム)などにもためこみ症と重複する部分があり、特定の症状が複数の病気で見られるので専門家でも診断は非常に難しいんです」
だからこそ、正しく知っておきたい。
Q ためこみ症って何?
片づけが苦手で部屋がいつも散らかりがち。だからといって即、ためこみ症であるとは言いがたい。
「判断基準のひとつは、本来、意図した目的で部屋が使えない状態であること。食卓でごはんが食べられない、寝室で普通に眠れない、お風呂でシャワーを浴びることができないなどです」
具体的なセルフチェックは下記参照。5項目のうち1項目でも4以上に当てはまるかどうかがひとつの指標になる。
「特徴としては、1.物の入手、2.保存、3.整理。この3つに区分できます。1.置く場所がないのに“セール”や“お値打ち品”と言われると入手してしまう。2.入手したものはたとえ使わなくても保管し続ける。そして3.カテゴリーの分類ができず整理ができない。たとえば鍋ひとつでもインスタントラーメン用、味噌汁用、パスタ用と用途を分けすぎて、最終的に整理がつかなくなってしまう。脳の情報処理の仕方が特有の動き方をするので、鍋は鍋というざっくりした分類ができないんです」
とはいえ、病気かもと過剰な不安を抱く必要はない。客観的に観察を。
「まずは自分の居住空間を客観視してみて。スマホなどで居間やキッチンの写真を撮ってみるとよいでしょう。床に物が積み上がって動線を妨げていないか、食卓に物が溢れていないかチェックを」
ただ、意外なのは、他人が所有している同じようなものの整理はまったく問題なくできること。整理したり処分する能力はもっているのに、いざ自分のこととなるとその能力を発揮できないのだという。
ためこみ症の可能性の有無をチェック。
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