冬から春、格別においしくなる沖縄の野菜。命の薬とも呼ばれる、旬の島野菜を食す旅。
撮影:大城 亘 文:川口美保
<今帰仁>【カフェこくう】空に続く店内で、土の力を感じる冬の野菜料理に舌鼓。
「天ぷらは長命草で、一株で一日長生きできるといわれています。朝、近くのおじいさんが海岸沿いで採ってきてくれたんですよ。ソテーしたのは片岡農園さんの島大根。根菜をたくさん食べてほしくて、その上には島ごぼうとレンコンを。どれもこの辺の野菜です」
今帰仁(なきじん)の自然が一望できる高台に立つ『カフェこくう』。オーナーの熊谷祐介さんが使う野菜は、目で見える範囲で、土の力を信じて作られる無農薬や自然農法のものばかり。本来の野菜の魅力を引き出すために熊谷さんが心がけるのは、食材に丁寧に、誠実に向き合うこと、その一点に尽きる。
「今帰仁は土壌がよくて、その土を守っていくために自然農法で栽培している農家さんが多いんです。そんな作り手さんの気持ちが伝わるようにと思っています。綺麗に洗ってあげるとか、じっくりとか、コトコトとか、そういうちょっとした気配りで野菜がよりおいしくなるんです」
一品一品、野菜の存在感が際立っている。それでいて全体が美しく調和している。大切にしているのは「季節」。この時季のこの土地だからこそのおいしさを味わってほしいと願っている。
カフェこくう●沖縄県国頭郡今帰仁村字諸志2031-138 TEL:0980-56-1321 (営) 11時30分〜17時 (休)日曜、月曜
<おすすめスポット>【長浜ビーチ】光り輝く海に癒やされる秘密にしたい天然ビーチ。
天然ビーチが多く残る沖縄県北部。夏場は熊谷さんも子どもたちと一緒によく行くという長浜ビーチは、地元の人たちが集まる癒やしの場所で、サンゴの白い砂浜と青く光る海とのコントラストがひと際美しい。全長1.5キロにもわたる城壁が美しい世界遺産の今帰仁城跡にも近いので、琉球の歴史を感じた後に、穏やかな気持ちで訪れたい。
長浜ビーチ●沖縄県国頭郡今帰仁村諸志805
<那覇>【トラットリア ランプ】畑を見続ける中で生まれた、季節を刻む野菜のスープ。
那覇に『トラットリア ランプ』を構えて8年。上江田崇シェフは、時間があれば、沖縄北部や南部に親しい生産者を訪ねて畑に行く。
「畑に行くと料理が思い浮かびます。相性がいいものを隣同士に植えてあるので、料理として合わせても相性がよかったりする。そんなふうに料理のヒントになるものが畑にあるんです」
そうやって畑に足を運んで生まれた一皿がある。「季節野菜のスープ」だ。
「12種類以上の野菜を入れることだけは決めています。これを一年続けると、季節で全然味が違うことがわかるんですよ。料理のレシピは変えず素材を替えていくことで、沖縄の作物の移り変わりが見えてくるんです」
野菜以外は塩とオリーブオイルのみ。シンプルゆえに力強い。野菜の個性が立体的に立ち上がってくるのだ。
「意識しているのは、何を食べているかわからないものは作らないということ。“これがいま、沖縄で旬の野菜です”ということを表現したいんです」
ひと口すすると、沖縄の気候や土壌が育んだ食材への敬意がひしひしと伝わってくる。それはまさに、沖縄への感謝とも言える、ありがたい味である。
トラットリア ランプ●沖縄県那覇市松山1-7-3 呉マンション1-A TEL:098-927-8675 (営)18時〜22時LO (休)日曜、第3月曜 予約制
<おすすめスポット>【波の上ビーチ】那覇市唯一のビーチで旅の最後にひと時の休息を。
上江田シェフがよく気分転換に行くという波の上ビーチは、那覇空港まで車で15分ほどの場所にあるため、旅の終わりにもうひと泳ぎするもいいし、海を眺めて旅を回想するのもいい。また、崖の上に立つ「波の上宮」にもぜひ訪れたい。ニライカナイの神々を信仰してきた琉球の歴史を感じさせる由緒正しい神社で、平和を願う、心静かなひと時を。
波の上ビーチ●沖縄県那覇市若狭1-25-11