【器好きのいつもの食卓】料理に手をかけられなくても、好きな器があれば心は満足します。
器好きで知られる器作家・イイホシユミコさんに、いつもの食卓を見せてもらった。
撮影・徳永 彩
イイホシユミコさんの朝食は、アトリエで。
「忙しくて家で食事する余裕がなくなると、いつもアトリエで食べているんです。朝食もここでとるのが日課になっています。食事の支度をして、あったかいものを食べて、エンジンをかける感じ。でも、仕事場だから時間をかけずにできる簡単なものばかり。料理とも呼べないくらい」
ダイニングキッチン付きのアトリエで、イイホシユミコさんはいつもどおりの朝食を用意してくれた。野菜とキノコのハーブ炒めとトーストを盛ったオーバルの皿は、自然の鉱物を釉薬に使ったイイホシさんの「リイラボ」というシリーズから。ややムラのある釉薬の独特の表情が特徴で、深みのあるブルーと品のいいベージュ、どちらも食材を引き立ててシックな絵のような美しさ。バターは、古道具店で見つけたお気に入りの黒い漆の小皿にのせて。こうした自作の器と漆器の組み合わせが、定番のスタイルだ。
「漆器は、形がすっきりしているところが好きなんです。私の器とも相性がよくて、和食に限らず、毎日の食事に普段使いしています」
料理好きで器好きだった母親の影響で、ちゃんと食事を作りたい気持ちが強かったイイホシさん。以前は梅干しだって自家製だったほど。
「そんな私が、いまは目玉焼きだけでごはんということも。それでも豊かな気持ちになれるとわかりました。いいオリーブオイルを買っておいて、塩こしょうして、好きな器で食べれば、それでじゅうぶん。心が満足するんです」
01 / 03
広告