心と身体を整える、精進料理の作り方。
撮影・合田昌弘
【松かさ】自由に、体験さえ盛り込むのが精進料理。
夜、庭でなにか爆ぜる音がした。外に出てみると、それは松ぼっくり。「では、晩のおかずは松かさに」と生まれたのがこの料理。「精進料理は自由で楽しいものなんです」
【材料(4人分)】
木綿豆腐 1丁 干し椎茸(大) 3枚 醤油 大さじ1 砂糖 小さじ1/2 サラダ油 小さじ1 揚げ油 適量 生姜醤油 適宜
【作り方】
1. 豆腐はまな板などに挟み、重しをしてしっかり水切りをする。
2. 干し椎茸は戻して、みじん切りにし、サラダ油で炒め、醤油、砂糖で味をつける。
3. 1をつぶし、2を加えてよく混ぜる。12等分にし、松かさの形をイメージしながらまとめる。
4. 170℃くらいに熱した揚げ油で3を揚げる。好みで生姜醤油をつけて。
【蒸し柿】舌のうえでとろける、なめらかな味。
「果物は新鮮なものをそのままいただくのがおいしいけれど、時にはこんな料理もいいものです」と西井さん。柿を蒸して、白味噌で作った酢みそを合わせる。精進料理なのに、官能的という言葉が浮かぶ、驚きの味。
【材料(4人分)】
柿(固めで種なしのもの) 1個 酢味噌[西京味噌 大さじ4 酒 大さじ1 砂糖 小さじ1 酢 大さじ1]
【作り方】
1. 柿は縦に4等分し、皮をむく。さらに櫛形に3等分に切る。
2. 蒸気の上がった蒸し器に並べ入れ、5分ほど蒸してから冷ます。蒸しすぎないように。
3. 酢味噌を作り、蒸し柿に添える。
【吹き寄せ】秋の庭の風情を思い描いて作る吹き寄せ。
ごぼうを松葉に見立て、にんじんは紅葉、麸は木の葉とイチョウ。「紅葉が赤く色づいた頃に始める料理がこの吹き寄せ」。味付けはシンプルだがひとつひとつ違う味わいが楽しめる。
【材料(4人分)】
皮付きごぼう 20cm(60g)[醤油 小さじ1 塩 小さじ1/4] 皮付きにんじん 3mm厚さ8枚[砂糖 大さじ1/2、塩 小さじ1/4] 銀杏 8個 栗の甘露煮 4個 しめじ 8房[酒 大さじ2 醤油 小さじ2] 緑麸 3mm厚さ2枚 粟麸 3mm厚さ2枚
【作り方】
1. にんじんはもみじ型で抜き、水1/2カップ、砂糖、塩で煮る。
2. ごぼうは5cm長さに切り、3mm角の細切りにする。鍋に入れ、ひたひたの水を張り、柔らかく煮てから、醤油、塩を加え、味をふくませる。
3. 銀杏と水を鍋に入れ、沸騰したら、おたまの背でこすって薄皮を取り除く。
4. 栗は2等分にする。
5. しめじは酒、醤油で煮、沸騰したら火から下ろす。
6. 緑麸は木の葉型で、粟麸はイチョウ型でそれぞれ8枚抜き、1の煮汁につけておく。
7. 1〜6を秋の落ち葉が吹き寄せられた庭の風情に盛り付ける。
【えのきだけの梅肉和え】おいしい梅干しひとつあればできあがる。
「秋はきのこがおいしい季節。手に入りやすいえのきだけでもしめじでもいいですね」。水を使わず、日本酒のみで蒸し煮にすることで、素材本来のもつ味が濃厚に感じられる。梅干しは上質なものを使いたい。
【材料(4人分)】
えのきだけ 1パック 梅干し 1個 酒 大さじ1
【作り方】
1. えのきだけは根元の部分を切り落とし、小房に裂いて3〜4cm長さに切る。
2. 1を鍋に入れ、酒を加えてさっと蒸し煮し、ボウルを重ねたザルにあける。
3. 梅干しは種を除き、すり鉢に入れ、2の煮汁少々を加えてすりのばす。
4. 3にえのきだけを加えてよく和える。
西井香春●竹之御所流精進料理後継者。16歳で渡仏し、料理と製菓を学んだ後、フランス料理研究家として活躍。その後、日本文化の原点に立ち戻り、三光院の二代目住職・香栄禅尼に師事、竹之御所流精進料理普及に尽力している。
臨済宗 泰元山 三光院●季節の恵みを目と舌で楽しむ竹之御所流精進料理は予約制で昼12時から。一汁五菜の〈花〉3,500円〜。精進料理教室ほか、写仏、仏教書道などの寺子屋塾も開催。 東京都小金井市本町3・1・36 TEL 042・381・1116
『クロワッサン』958号より
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