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『審美』西尾 潤 著── 一人の男性美容家の生涯にわたる謎と秘密

文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。

文・瀧井朝世

『審美』 西尾 潤 著 小学館 1,980円
『審美』 西尾 潤 著 小学館 1,980円

作家であり、ヘアメイク・スタイリストでもある著者が、輝山マムという一人の男性美容家の人生を描いた長編。もちろん、架空の人物である。

1933年、長崎に生まれた菊男は戦地で父を、原爆で祖母と母と兄を喪い、自身は額に傷を負う。親戚を頼って妹のサタヨと上京するも目的を果たせず、上野の地下道を寝床にし、大人に騙され子どたちに暴力を振るわれ、過酷な生活を送ることに。だが、焚火でお金を取る「暖め屋」のノボルと男娼のとめ子が彼らに手を差し伸べる。

のっけから波瀾万丈で、これでどうやって稀代の美容家になれたのかと思うほどだが、意外な成り行きで美容業界に入った上に、そこからもまたさらに波瀾万丈。その合間に、実際に起きた出来事を盛り込み、マッカーサーなど実在の人物を登場させ、濃密な人間模様、人生模様が描かれていく。

もちろん、〝美〟や〝審美〟とはなにかも考えさせられる。特に、終盤の輝山マムとなった菊男のインタビューで語られる〝老い〟に関する発言には深くうなずかされた。ルッキズムへの批判が浸透する昨今、人の外見に関する〝美〟のとらえ方はどう変化していくのか、改めて興味もわいたのだった。

『クロワッサン』1160号より

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