SHISHI-IWA-HOUSE KARUIZAWA──モデルKIKIさんがナビゲート「山と触れ合うことで、自分と向き合うホテル」
撮影・青木和義 構成&文・堀越和幸
「自然がもたらす不便さが、リズムを呼び戻してくれる」
KIKI(きき)さん モデル。モデルのほか、女優、写真家としても活躍。登山、建築、写真などをテーマにしたエッセイを執筆。著書に『美しい山を旅して』が。
山のホテルの2つ目は、長野県軽井沢の『SHISHI–IWA–HOUSE KARUIZAWA』(以下、SSH)だ。浅間山の麓に抱かれるようにしてあるSSHは2018年の1軒目(No.1)の開業から立て続けに2軒目(No.2)、3軒目(No.3)とシリーズを増やし、今回KIKIさんが訪れたのは一番新しいNo.3である。実はKIKIさんがSSHに訪れるのはこの日が初めてだが、その良さは仕事で訪れたことのある夫から聞かされていた。
「浅間山はこれまでに何度も登っているので、ぜひ一度こちらに来てみたいと思っていました」(KIKIさん)
SSHの大きな特徴は、各建物が有名建築家によってデザインされた点だろう。その建築家はNo.1とNo.2が坂茂(ばん・しげる)さんで、No.3が西沢立衛(にしざわ・りゅうえ)さん。そしてこの日訪れたNo.3の構造は10棟からなる各部屋がまるで縁側のような廊下でつながっているのが非常に印象的だ。総支配人の荻原大智さんによれば、これはあえて宿泊者同士の交流が作れるように設計された、いかにも西沢さん的な発想なのだそう。そしてKIKIさんはそれに心当たりがあった。
山と触れ合うことで、本来の自分と向き合う
「学生時代に建築を専攻していた私にとって、西沢さんは時代の先端を行く人でした。同じような発想で当時、都内に〈森山邸〉という共同住宅が建てられたのを友だちと見にいったことを懐かしく思い出しました」
KIKIさんが通された部屋はNo.3の中でも一番コンパクトながら、2面に切られた大きな窓から森の景色が眼前に迫ってくる美しい部屋だ。実はこの部屋が西沢さんの一番のお気に入りらしい。
「こちらのホテル群が“自然との触れ合いで自分と向き合う”というコンセプトであるのがよくわかります」
ところでKIKIさんは、登れなくともなぜ山に行きたくなるのか?
「都会の生活は便利だけれど山では急な雨や雷に抗えない。自然は強い。そういう不便さが普段の自分を改めてくれる気がします。山に入ったら委ねるしかない。そう思うと、自然と肩の力が抜けていくんです」
自然と触れ合うことで人の疲れを癒やすことを目的に建てられた、現代建築のリトリート。アクセスはJR「軽井沢」駅からタクシーで約10分。近隣ではトレッキングなども楽しめる。
『クロワッサン』1148号より
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