現地で学んだ! 美食の国ペルーの代表料理「セビーチェ」のつくり方
撮影・文 中森りほ
海岸、山岳、アマゾンなど多様な食材と文化が融合したペルー料理
近年、「ワールド・トラベル・アワード」の美食部門で最優秀賞を何度も受賞するなど、世界中から熱い視線が注がれているペルー料理。その魅力は、アンデス山脈、太平洋、アマゾン川がもたらす多様な食材と、先住民の伝統にスペイン、中国、そして日本などの食文化が融合した独創性にあります。
日本の食卓にも馴染みの深い食材であるジャガイモやトマト、トウガラシ、トウモロコシの原産地は、ペルーのアンデス山脈。インカ帝国時代から大切に育まれてきた作物は、大航海時代を経て世界中に広まり、各国の食文化に大きな影響を与えました。
首都のリマに代表される海岸地帯では、新鮮な魚介類が豊富で、シーフード料理が盛ん。
一方、熱帯雨林が広がるアマゾンは、ピラニアやパイチェといった川魚、ユカ(キャッサバ)、フルーツやカカオなどエキゾチックな食材が手に入ります。
さらには、先住民の食文化に、スペインをはじめとするヨーロッパの調理法や食材が融合した「クリオージャ料理」、中国系移民の食文化とペルーの食材を掛け合わせた「チファ」、日系人による和食文化と現地のペルー料理が合わさり進化した「ニッケイ料理」など、多様性豊かな食文化も奥深い!
また、ペルーには2025年版「世界のベストレストラン50」で1位に輝いたニッケイ料理レストラン「Maido」など、世界の美食家が足を運ぶ高級レストランが増えています。
一方魚介料理が味わえる「セビチェリア」や鶏の炭火焼き専門店の「ポジェリア」など、大衆食も賑わいを見せ、庶民の食も豊かです。
私たちの食卓に欠かせない多くの野菜や果物のふるさとであるペルーは、まさに食材の宝庫であり、味の宝庫でした。
生魚を使ったペルー料理「セビーチェ」とは?
そんなペルーの国民食の一つが、セビーチェ。その調理法などは、ユネスコ無形文化遺産に登録されており、2000年以上前に南米の北部沿岸(現在のペルー、エクアドル、コロンビアなど)で生まれた歴史ある料理です。
インカ帝国以前の時代、人々は新鮮な魚を「トゥンボ」と呼ばれる地元のフルーツの果汁でマリネして食していました。その頃には、トウモロコシを発酵させて作る「チチャ」という酒で魚をマリネしていたとされています。
スペイン人の到来により、ライムや玉ねぎといった新しい食材がもたらされ、セビーチェは現在の形へと進化しました。もともとは魚に塩を振り、アヒ(唐辛子)と柑橘果汁を加えて楽しむシンプルなものでしたが、さつまいも、トウモロコシ、海藻などが加わり、ペルーを代表する一皿となったのです。
セビーチェのレシピ
【材料(2人分)】
白身魚…160g(ヒラメなどがおすすめ)
レチェ・デ・ティグレと呼ばれるマリネ液…150ml ※詳しい作り方は下記参照
アヒ・リモ…2g(唐辛子で代用可能)
パクチー…2g(みじん切り)
赤玉ねぎ…15g(薄切り)
塩…少々
〈飾り付け〉
煮て潰したさつまいもペースト:40g
「チョクロ」というペルーのジャイアントコーン(茹でたトウモロコシで代用可能)… 20g
「カンチャ」というペルーの揚げトウモロコシ(ポップコーンの種で代用可能)…2g
【作り方】
1. 白身魚を約1cm角に切る。
2. ボウルに1を入れ、塩、刻んだアヒ・リモ、パクチーを加えて混ぜ合わせる。
3. 器にさつまいもペーストをスプーンでこすりつけ、チョクロ、カンチャ、材料の半量の赤玉ねぎを盛りつけておく。
4.ボウルにレチェ・デ・ティグレを注ぎ、具材と混ぜ合わせる。
5.薄切りにした赤玉ねぎを加えて和える。
6.ボウルの具材を器に盛り付けたら完成。
レチェ・デ・ティグレとは?
セビーチェを作る上で欠かせないマリネ液が、レチェ・デ・ティグレ。ライムの酸味、魚介の旨味、唐辛子の辛味、香味野菜の風味が凝縮されており、セビーチェの味の決め手となります。
スペイン語で「虎の乳」という意味を持ち、現地ではエナジードリンクのように飲まれたり、前菜として提供されたりすることも。疲労回復や二日酔いに効く“魔法の一杯”とも言われています。
【材料】
ライム果汁(またはレモン汁)… 600ml
セロリ(茎の部分)…150g
にんにく…2片
赤玉ねぎ…80g
生姜…30g
パクチー(茎ごと)…30g
魚の切り身やアラ…50g
黒胡椒(挽いたもの)…6g
塩…15g
【作り方】
1. セロリ、にんにく、赤玉ねぎ、生姜、パクチーを粗く潰すか刻む(ブレンダーを使ってもOK)。
2. ボウルに1の野菜、魚のアラ、塩、黒胡椒を入れ、手で揉み込み、約5分半置く。
3. ライム果汁を加え、野菜を軽く押しながら2時間漬け込む。
4. すべての材料を濾し器に移し、ろ過する。スプーンなどで野菜や魚を押し付け、最後の一滴までエキスを絞り出したら完成。
こちらはレストランレベルの本格的なレシピ。より簡単にマリネ液を作りたい場合は、柑橘果汁にすりおろしたにんにく、塩・胡椒をお好みで加えるだけでも作れます。
ペルーのセビーチェで、残暑を乗り切ろう
ライムの酸によって魚が調理され、爽やかな味わいのセビーチェは、まだまだ暑い日が続く今の季節にもぴったり。セビーチェに用いるレチェ・デ・ティグレは、魚介料理の万能ソースとして、サラダのドレッシングとしても活用できます。また、肉料理や野菜料理のマリネ液や、スープの隠し味にもおすすめです。ぜひご自宅でペルーの風を感じてみてください。
取材協力:ペルー貿易観光投資庁
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