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『運命の終い』著者 奥田亜希子さんインタビュー ──「対等な関係性について考えてみたかった」

30代で夫をなくし、無味乾燥な毎日を送っていた彩香はある日、衝動的に”雑な恋愛”をスタートさせるが……。──本を読んで、会いたくなって。著者の奥田亜希子さんにインタビュー。

撮影・園山友基 文・一寸木芳枝

奥田亜希子(おくだ・あきこ)さん 1983年、愛知県生まれ。2013年、第37回すばる文学賞を『左目に映る星』で受賞しデビュー。著書に『ファミリー・レス』『青春のジョーカー』『白野真澄はしょうがない』『夏鳥たちのとまり木』『ポップ・ラッキー・ポトラッチ』などがある。
奥田亜希子(おくだ・あきこ)さん 1983年、愛知県生まれ。2013年、第37回すばる文学賞を『左目に映る星』で受賞しデビュー。著書に『ファミリー・レス』『青春のジョーカー』『白野真澄はしょうがない』『夏鳥たちのとまり木』『ポップ・ラッキー・ポトラッチ』などがある。

『求めよ、さらば』で第2回「本屋が選ぶ大人の恋愛小説大賞」を受賞した奥田亜希子さんの最新作のテーマは、再び恋愛。それも、「運命の恋の“その次”にする大人の恋愛」だ。

「若い頃にエネルギーをぶつけあうような恋愛を経験した大人が次にする恋ならば、抑制が効いてコントロール可能な関係なのではないかと思い、書き始めました」

主人公、中村彩香は40歳。ハタチで高校時代の教科担任だった20歳年上の哲文と妊娠を機に結婚。その夫は3年前に他界し、一人娘も北海道の大学に進学し、現在はひとりで暮らす。そんな彼女がふと考えてしまう、彼との結婚で失ったもの。

「芸能人の年の差婚のニュースを耳にした時に、いつもモヤモヤしたものを抱いてしまう自分がいて。それがなぜなのかを突き詰めて考えていくうちに、対等性が見出せないからではないかと思うようになりました。上下関係が固定されているようで、その不均衡さが心地悪いというか。でもそれって勝手にこちらが思っているだけで、本人たちにとっては、ただ恋愛して結婚しただけのシンプルな話なんですよね」

彩香も運命的な恋と信じて進んだ人生を後悔しているわけではない。だが〈途絶えた友情。卒業しなかった大学。就けなかった定職。実の親に対する信頼喪失。姑の介護。夫の看病。そして死別〉。幸せだったが、決して横並びではなかったふたりの関係を思い出すたびに、さみしさが増していく。

雑な恋愛の先にたどり着いた自身の見つけたものとは

ある日、彩香は突如、行動に出る。それが“ロマン不要の雑な恋愛”をすること。相手は、1歳年下の今井大地。彼もまた、多くを語らないが同様に気軽な交際を求め、ふたりは〈連絡は、密に取らない。冗長なメッセージのやり取りはしない。疲れていたら、無理して会わない。外食は割り勘に〉。そして〈質問は詮索の一歩目。詮索は束縛の一歩目だ〉とし、〈相手自身のことをあまり尋ねない〉と、“雑な恋愛”の骨格を探り探り固めていく。

彩香が生まれて初めて結んだ勾配のない関係は心地よく、穏やかな日々が訪れる。だがやはり、相手の事情に深く立ち入らないようにしていても、ふたりの関係は変わっていく。〈変容は、何かが新たに生まれた時からどうしようもなく始まってしまうもの〉だからだ。

「どんな人間関係にも対等な瞬間なんてそうそうない。株価のように日々変動しているし、瞬間、瞬間でも入れ替わる。ただ、私自身が彩香の視点で物語を書けたことで、年の差婚に対する新たな見方を得たような気がしています。そしてやっぱり、人って雑には恋愛をできないのだと思いました」

始まった先に、大地から明かされたある事実。それを彩香はどう受け止め、どんな決断を下すのか。読後のからりとした爽快感も今の時代らしい物語だ。

30代で夫をなくし、無味乾燥な毎日を送っていた彩香はある日、衝動的に”雑な恋愛”をスタートさせるが……。 小学館 1,870円
30代で夫をなくし、無味乾燥な毎日を送っていた彩香はある日、衝動的に”雑な恋愛”をスタートさせるが……。 小学館 1,870円

『クロワッサン』1148号より

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