『グッド・シスター』サリー・ヘプワース 著 梅津かおり 訳──双子の姉妹が抱える秘密とは
文字から栄養。ライター・瀧井朝世さんの、よりすぐり読書日記。
文・瀧井朝世
オーストラリア発の心理スリラー。途中まで「特にスリラーって感じでもないなあ」と思っていたら、後半の展開にびっくり。
ファーンとローズは双子の姉妹。父親はおらず、母親は彼女たちが十二歳の時にオーバードーズで入院し、以来姉妹は里親のもとを転々としてきた。二十八歳の今、ファーンは図書館で働き、結婚したローズとは週三回食事をともにしている。
ファーンは感覚処理に不自由があり、人混みや騒音や特定の匂いが苦手だ。規則正しい生活を好み、いわゆる「空気を読む」ことに長けてはいない。彼女にとってローズは何より大切な存在だが、図書館に来た青年、ロッコと親しくなり、その日常が変化していく。
姉妹は少女時代に恐ろしい体験をしている。時折挿入されるローズの日記には、姉妹の過去が綴られており、それによると母親はいわゆる毒親だった模様。母に恋人がいた時期もあり、その時に起きた悲しい出来事の真相を、二人は秘密にしているようで……。
予想外の真相が明るみになって驚き、それ以降も「この先どうなるの!」とハラハラしながら読み進めた。いやはや、まさしく心理スリラーであった。
『クロワッサン』1147号より
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