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【粋な東京パワースポット】回向院(両国)──昔も今も鼠小僧の墓が人気の理由は?

いざという時にお参りする神社やお寺は江戸の人々にはどんな存在だった? 人気の社寺を実際に訪れ透かし見えたのは、嗚呼、花のお江戸の景色かな。──江戸文化研究家の滝口正哉さんとコラムニスト・辛酸なめ子さんが江戸の代表的な社寺へ。今回は、両国の回向院を訪ねた。

撮影・青木和義 イラストレーション・辛酸なめ子 構成&文・堀越和幸

宝永2年(1705年)に安置された本尊の阿弥陀如来。台座には故人の名がびっしり刻まれている
宝永2年(1705年)に安置された本尊の阿弥陀如来。台座には故人の名がびっしり刻まれている

回向院(両国)
墨田区両国2-8-10  TEL:03-3634-7776 https://ekoin.or.jp/

昔も今も鼠小僧の墓が人気の理由は?

隅田川にかかる両国橋から歩いて数分のところに回向院(えこういん)はある。江戸にはいくつかの大きな火事があったが、中でもつとに有名なのは明暦の大火(1657年)で、10万人を超える死者を出し、その犠牲者を弔うために寺が建てられた。

「両国橋のたもとに広がる空き地は幕府から火除地(避難所)に指定され何もない所だったのですが、いつもそれではもったいないということで次第に屋台や芝居小屋が立ち始めました」(滝口さん)

そうして気が付けば、両国は浅草と並ぶ江戸屈指の盛り場となったのである。

左・山東京伝の墓。奥は弟、山東京山の墓/右・削られて丸みを帯びている鼠小僧の墓
左・山東京伝の墓。奥は弟、山東京山の墓/右・削られて丸みを帯びている鼠小僧の墓

ところで辛酸さんは江戸の戯作者、山東京伝の『箱入娘面屋人魚(はこいりむすめめんやにんぎょ)』(浦島太郎の子どもが人面魚遊女になるというシュールな物語)が大好きなのだが、京伝の墓が回向院にあるとは知らなかった。

「浮世絵の鳥居清長の碑もありますよね。なぜ両国なんでしょうか?」(辛酸さん)

「盛り場になって、当時の文化人がこぞって集まってきたからです」(滝口さん)

さらに無辜の犠牲者だけではなく一部罪人の埋葬も受け入れた回向院では鼠小僧次郎吉の墓が人気だ。何でもこの墓、石を削り取って持ち帰ると勝負運が上がるということで削る人が絶えず、数え切れない墓石が削るために建立された。

お参りついでにこんなお土産

【粋な東京パワースポット】回向院(両国)──昔も今も鼠小僧の墓が人気の理由は?

『両国 國技堂(こくぎどう)』のあんこあられ
大正7年創業。相撲にちなんだ両国らしいお菓子で人気のお店。あんこあられ480円、揚げあんこあられ500円(共に8個入り)。

墨田区両国2-17-3  TEL:03-3631-3856 (営)10時〜19時 無休
  • 辛酸なめ子

    辛酸なめ子 さん (しんさん・なめこ)

    コラムニスト、漫画家

    独自の感性であらゆるジャンルの事象をフィールドワーク。近刊には『江戸時代のオタクファイル』(淡交社)がある。

  • 滝口正哉

    滝口正哉 さん (たきぐち・まさや)

    江戸文化研究家

    江戸文化に関わる多くの著作、論文を著し、セミナーなどでも活躍中。著書に『江戸の祭礼と寺社文化』(同成社)などが。

『クロワッサン』1145号より

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