実際に保護猫の譲渡現場を見てみよう!──キャットブリーダー 沢辺雅斗さんに聞く
撮影・石原敦志 文・門上奈央
里親になりたいと思った際、検討するのは動物指導センターや保護団体、個人ボランティアなど幅広い。中でも画期的な取り組みをするのが、昨年9月に開院した「ねこの森 富士見台どうぶつ病院」。ここでは猫に特化した診療やトリミングに加え、院内の保護猫ゾーンでケアから譲渡まで一貫して行う。
「動物病院としてできることをしたい。少しでも多くの命が助かってほしい。“動物が好き”という一心で保護猫活動を始めました」(窪木未津子院長)
多くの保護猫と飼い主の縁を繋いできた窪木さんが考える、保護犬や保護猫を迎える人が心得ておきたいことは。
「飼い主さんには動物と気長に向き合ってもらえたら。焦って距離を詰めようとせず、人間や先住動物と互いに興味を持ち合う環境づくりが大切です」
沢辺さんと共に、譲渡までの流れをシミュレーション体験してみよう。
1.見学の予約
電話などで見学日時を決定。施設にいる猫の下調べも
「ねこの森 富士見台どうぶつ病院」から保護猫を迎えるとなれば、ファーストステップは保護猫ゾーンの見学。電話(開院日の9〜19時)またはHPから予約するか、病院受付で直接見学したい旨を伝えることで、日時を予約できる。
「当院では譲渡会も開催しますが、想定以上に混み合い面会時間が10分程度に限られてしまったことも。日にもよりますが、開院日は比較的落ち着いて見学してもらえるかと思います」(窪木さん)
見学当日までに病院が運営するYouTubeやSNSに目を通し、どんな保護猫がいるのかを“予習”するのも一案。
「見学時にお目当ての子を探すのはもちろん結構ですが、予約の際は気になる猫がいるかを念のため確認しています。その時点でほかに里親希望者がいる場合は、別の猫を提案することも」
2.見学
保護猫のあらゆる姿を観察。同時に自分の意思を再確認
「保護猫ゾーン入り口で消毒済みスリッパを用意していますが、衛生管理上、靴下の着用をお願いしています」(窪木さん)
そのほかはどこのシェルターを見学する場合も共通する、保護猫の負担を極力軽減するためにわきまえたいエチケットが。
「せっかくなので猫たちと心置きなく接触してほしいのですが、あまりに長居されると、人慣れ訓練中の猫は疲弊してしまう可能性も。家族全員で見学に来ていただくのはもちろん大歓迎です。ただ私自身子どもがいるのでよく分かるのですが、元気いっぱいなお子さんに驚いてしまう猫がいることも事実です」
少しでも猫とコンタクトできるようスタッフから渡されるおやつを手に、いざ見学。またこの日、猫との触れ合いと同等に大事なのがスタッフとの一問一答。
「見学者の方の質問にも答えますし、我我からも現在の居住環境やライフスタイルなどを伺います。どんな人なのか、お互い見極める時間と言えるでしょう」
3.譲渡申込書の提出
共に暮らすイメージと覚悟が固まったタイミングで申請
1回〜複数回の見学を経て、自分の家族に迎えたい猫とついに出合ったら、そのタイミングで譲渡申込書を記入。申込書にある項目は保護団体により異なるが、「ねこの森 富士見台どうぶつ病院」においては、主に現在の家族構成や住居環境、猫の飼育経験の有無、譲渡後の猫の世話に関する想定イメージ、譲渡を希望する理由など。またこの病院では譲渡条件として、単身者や60代以上の人を対象外としないことも特筆すべきポイント。
「動物病院を開いてさまざまな方と出会い、また私自身の実感として、動物を飼うことで人生が豊かになると確信しています。よって一定の条件をクリアした単身や高齢の方には、万が一の場合に譲渡した猫を当院で引き取るという内容を含んだ保証プランを用意しています。60代以上の方には後見人をつけるか、保証プランに加入してもらいます。このようなシステムにすることで、譲渡後の心配事を軽減したいと思っています」(窪木さん)
4.審査
近い将来、この子が家族に? トライアルも並行して実施
譲渡申込書に基づき、他の里親希望者がいる場合はその選定も合わせて審査が進む。並行して「ねこの森 富士見台どうぶつ病院」では、譲渡を希望する猫のトライアルを要望に応じて実施している。ただ、沢辺さんによればトライアルは、「譲渡金の支払いが済んだ契約締結後に設ける団体が比較的多い」とのこと。このタイミングで保護猫が快適に暮らせそうか、自分の生活に合うかを見極める。
5.譲渡契約書の提出
無事審査が通れば正式譲渡。再び来院して契約を締結
晴れて審査が通りトライアルも事なく終われば、正式譲渡が決定。再び来院し、譲渡契約書の記入を。終生飼育の誓約や室内飼育の徹底、定期的な健康診断やワクチン接種の実施などの基本条件を改めて確認、同意した上で署名する。合わせて譲渡金として以下の実費を用意する。「ねこの森 富士見台どうぶつ病院」では各種検査や寄生虫駆除、マイクロチップの装着、去勢避妊手術などこれまでの費用を全て含めて7万円(税込)。
「譲渡のタイミングでマイクロチップの装着や去勢避妊手術が完了しているのは、さすがの手厚さ。動物病院ならではの行き届いたケアのおかげで飼育未経験者も安心して迎えられるはず」(沢辺さん)
6.譲渡
書類一式とキャリーケースを持って、我が子をお迎え
譲渡当日は顔写真付きの身分証明書、飼育ケージや部屋全体を写した写真(スマホ撮影可)、先住犬・猫のワクチン証明書と狂犬病接種証明書(犬)、帰路において保護猫の居場所となるキャリーケースを持参。待望の新生活がスタート!
ねこの森 富士見台どうぶつ病院
譲渡会も定期的に実施。開催情報や家族を募集中の保護猫に関する詳細は、インスタグラムの公式アカウント(@nekonomori2222)でチェック。
https://fujimidai-ac.com/neko-mori-animal-hospital
『クロワッサン』1140号より
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