森山未來さん「演じることへの解像度は14年前よりあがっていると思う」
撮影・天日恵美子 スタイリング・杉山まゆみ ヘア&メイク・須賀元子 文・木俣 冬
演じることへの解像度は14年前よりあがっていると思う
主演舞台『おどる夫婦』というタイトルは暗喩だろうと承知のうえで「劇中で踊りますか?」と聞くと、森山未來さんは誠実に答えてくれた。
「何をもって『踊る』と考えるか、ですよね。振り付けどおりに踊ることだけが踊りではないし、皆さんが思う『踊る』が提供できなくても、踊りというものは作れると僕は思います。でもそこは脚本と演出を手掛ける蓬莱竜太さんの考え方次第ですね」
森山さんは実家がダンス教室で、幼少期からダンスに親しんできた。俳優としての活躍も周知のこと。自ら発信するアーティスティックな表現活動と、求められたものを演じるエンタメ商業作という両極端な領域を自在に行き来している。
「ダンスの要素である身体は人間のコアにあるプリミティブなコミュニケーションで、セリフに代表される言葉は、また別のコミュニケーションだと思っていて。でもどちらにも楽しさがあります」
『おどる夫婦』は夫婦の10年の物語で、森山さんが演じる夫は妻と出会った大学時代、気持ちを吐き出すために戯曲を書いていた。
「僕にとっても表現の根っこは衝動だと思いますし、単純に多動なので動かずにはいられない。『サメ(回遊魚の意)』と言われたこともあります(笑)」
言葉と身体、今度の舞台はまさに森山さんの魅力の全部盛りになるのではないだろうか。W主演の長澤まさみさんとは約14年ぶりの共演となる。
「『世界の中心で、愛をさけぶ』(’04年)や『モテキ』(’11年)の長澤さんは僕の役にとって象徴的な人物でしたが、今回は、価値観の違いはありながら、それでも一緒に生きていこうとする夫婦役。この14年間、それぞれが積み重ねてきたことがどう芝居に出てくるか楽しみです」
あの頃の森山さんは何を考えていたのだろう。
「そんなに変わってないんじゃないかな。以前からずっと、演じるとは、表現するとは、踊るとはどういうことなのかを考えていました。今のほうが解像度はあがっているかもしれませんが」
『クロワッサン』1138号より
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