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「タピオ・ヴィルカラ ー 世界の果て」東京ステーションギャラリー【青野尚子のアート散歩】

文・青野尚子

ラップランドの自然から生まれたデザイン

フィンランドを代表するデザイナー、タピオ・ヴィルカラ(1915〜1985)。40年にわたってイッタラ社のデザイナーとして第一線で活躍し、ガラスのほかにも磁器、銀食器、ジュエリー、照明、家具、グラフィック、空間など幅広い分野で仕事をしている。フィンランド紙幣やフィンランド航空の機内用食器、「フィンランディア」ウォッカボトルなどのデザインも手がけた。日本でも何度か紹介されているセラミック・アーティスト、ルート・ブリュックの夫でもある。その彼の、日本では初めての回顧展が開かれる。

《スオクルッパ》1976年
《スオクルッパ》1976年

ヴィルカラの着想源はラップランドの静寂に潜む生命の神秘や大自然の躍動だ。葉の形をした皿は合板を重ねて断面を削り上げたもの。木目が葉脈のように見える。キウイのような姿のオブジェ《スオクルッパ》はヴィルカラが生み出した想像上の鳥。カラフルなガラス器はヴェネチア・ムラーノ島の職人との協働で作り出されたものだ。「ウルティマ・ツーレ」(世界の最北)と名付けられたガラス器やレリーフはラップランドの溶けおちる氷からインスピレーションを得ている。

会場には1960年代にヴィルカラが過ごしたラップランドの小屋を見立てた空間に、愛用の道具や写真を展示するコーナーもある。フィンランドの雪と氷、静かな湖に囲まれた地で彼が何を考え、何を作り出していたのかに触れられる。

《リーフ・ディッシュ》1950年代  共にTapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. (C) Ari Karttunen / EMMA (C)KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4780
《リーフ・ディッシュ》1950年代  共にTapio Wirkkala Rut Bryk Foundation Collection / EMMA – Espoo Museum of Modern Art. (C) Ari Karttunen / EMMA (C)KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2024 C4780
カイ・フランク、ティモ・サルパネヴァらと並びフィンランドデザインの三巨匠と称されるヴィルカラ。約300点のプロダクトや写真、ドローイング(複写)のほか、妻ルート・ブリュックの作品も並ぶ。
 
『タピオ・ヴィルカラー 世界の果て』
4月5日(土)~6月15日(日)
●東京ステーションギャラリー(東京都千代田区丸の内1・9・1) 
TEL.03・3212・2485 
10時~18時 月曜休(5月5日、6月9日は開館) 
入館料一般1,500円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1138号より

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