スチャダラパーの歌詞は物語性が高いんです【川原繁人さん×ANIさん対談】
撮影・黒川ひろみ 文・嶌 陽子 構成・堀越和幸
言葉について考える対談の2回目、今回のテーマは「ラップ」。その面白さや楽しみ方とは?今年でデビュー35周年を迎えるラップグループ、スチャダラパーのMC、ANIさんに、スチャダラパーの大ファンであり、日本語ラップを研究対象にもしている言語学者、川原繁人さんが迫る。
川原繁人さん(以下、川原) 私の初めてのラップとの出合いはスチャダラパーなんですよ。中学3年生の時にカラオケで友だちが「今夜はブギー・バック」を歌っているのを聞いて「何だこれは!」って衝撃を受けたんです。ANIさんとBoseさんの掛け合いも好きでした。ANIさんはいつ頃ラップに出合ったんですか?
ANIさん(以下、ANI) 高校生の時にブレイクダンスが流行り出して。ハービー・ハンコックの「Rockit」とかマイケル・ジャクソンの「Thriller」を聴いたりしてました。ブレイクダンスをきっかけにヒップホップって面白いなと思って、自然とラップの曲も聴くようになりましたね。
川原 その頃からターンテーブルを持っていたとか。
ANI それはもう少し後、専門学校時代です。友だちが持っていて、ブレイクビーツをやってるのを見て自分もやってみたいなと。それで秋葉原でDJセットを買いました。
川原 スチャダラパーの結成も専門学校時代だったんですよね。
ANI 文化祭の出し物でやろうか、みたいな感じで結成したのが始まりです。その後ちゃんと続けたのはBoseとSHINCOの2人で、僕は裏方だったんですが、アルバムデビューする時にプロデューサーの高木完さんが、「2人より3人のほうがいいから写真に映っておきなよ」と。そのうちライブにも出るようになった感じです。
リズムと韻が生む耳心地のよさ。
韻を踏むことより話が面白いほうがいい
川原 ANIさんはラップのどういうところが好きなんですか?
ANI 最初に好きになった頃は、サンプリングっていうのが新鮮で。他人の曲を組み合わせて新しい曲を作るところが面白いなと思ってました。
川原 スチャダラはライブで『太陽にほえろ!』もサンプリングしてましたね。
ANI あと、当時ビースティ・ボーイズが好きで、初来日した時のライブにも行きました。すごく楽しそうで、カッコいいなと。日本人だと、いとうせいこうさんとかタイニー・パンクスとかのライブにも行ってましたね。
川原 そういう日本におけるラップ黎明期の人たちがアメリカのラップを直接取り入れたのに対して、スチャダラさんたちやライムスターら第二世代は、それを受けて日本語ラップ独自のスタイルを築いていきましたよね。
ANI そうなんですかね?違うことをしたいとは思ってたかも。
川原 あと、スチャダラのラップは歌詞のテーマが身近なところが好きです。「The Late Show」なんて、遅刻の言い訳だけで1曲作ってるし。「サマージャム’95」も大好き。私は言語学者として日本語ラップの韻を研究しているんですが、スチャダラの歌詞はあまりにストーリー性がありすぎて、音として分解して分析する気にならないんですよ。もちろんいい意味で。
ANI 確かに、歌詞は韻よりも話が面白いほうを優先しますね。
日常風景の〝あるあるをリリックに。
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