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仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

お寺で何となく拝観している仏像は、ちょっとの知識があれば世界が変わります。京で必ず拝みたい仏像と共にその極意を教えましょう。

イラストレーション・田中ひろみ 構成&文・堀越和幸 写真・アフロ

禅林寺(永観堂)|阿弥陀 如来立像(あみだにょらいりゅうぞう)

仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

永観を促して待つ、優しい心の阿弥陀様。

仏像マニアのみうらじゅんさんと対談した際に田中さんが一番好きな仏像として挙げたのがこちら。後ろを振り返る珍しい姿から〝見返り阿弥陀〞とも呼ばれている。「寺の中興の祖、永観がある時お堂を一晩中ぐるぐる巡る修行をしていると、目の前に突然、阿弥陀如来像が現れ〝永観、おそし〞と励まし、先導を始めたそうです。そのエピソードを聞くだけで私は痺れます」。像高約80cmしかない仏像ながら、忘れられない存在感だ。

仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

古くから"秋はもみじの永観堂"といわれるくらいに紅葉の地として名高い。

◆京都市左京区永観堂町48 
京都駅から市バス5系統「南禅寺・永観堂道」下車、徒歩3分。

清凉寺|釈迦如来 立像(しゃかにょらいりゅうぞう)

仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

文字どおり〝生身の像には、お腹の中に内臓が!?

お釈迦様は37歳の時、亡くなった生母に法を説くために天に赴いた。「その際に釈迦の不在を悲しんだ弟子たちは寂しさを紛らわすために生き写しの像を作らせました」。その模刻を時の奝然上人(ちょうねんしょうにん)が日本に持ち帰ったのがこの釈迦如来である。〝生身(しょうじん)の釈迦如来像〞とも呼ばれていて、仏像の中には何と絹でできた内臓の標本が入っていたそうです(イラスト右上)」。片方ではなく両肩を覆う〝通肩〞の衣装スタイルも珍しい。

仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

清凉寺は光源氏のモデル、源融(みなもとのとおる)の別荘があったところ。

◆京都市右京区嵯峨釈迦堂藤ノ木町46 
京都駅から市バス28系統、91系統「嵯峨釈迦堂前」下車、徒歩2分。

寿宝寺|十一面千手 千眼観音立像(じゅういちめんせんじゅせんがんかんのんりゅうぞう)

仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

蝶のように1000本の手を広げる美仏。

〝千手観音〞といえば、拝んだ両手が2本、左右に20本ずつと合計42本の手を持っているのが一般的だが……。「こちらの観音様は本当に1000本あるとされていて、大変珍しい。扇状に開かれた無数の手は蝶のように美しく、しかもその手のひらには眼が描かれています」。全方位に目を配り、何かあったら手を差し伸べる。微妙な光の加減で、日中の厳しい顔が月明かりの下では慈悲の表情になるのも特徴的だ。

写真:アフロ
写真:アフロ

十一面千手千眼観音立像は重要文化財に指定されている。

◆京都府京田辺市三山木塔ノ島20 
近鉄京都線「三山木」駅、JR学研都市線「JR三山木」駅下車、共に徒歩5分。

金剛院|深沙 大将立像(じんじゃだいしょうりゅうぞう)

仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

あの三蔵法師を救った、インパクト大の仏の姿。

日本海側、舞鶴市にある金剛院。ここには、快慶作の重要文化財、深沙大将が安置されている。「深沙大将は西遊記で有名な三蔵法師が旅の途中で倒れそうになった時に砂漠の中から現れ助けた仏様です。西遊記では沙悟浄のモデルにもなったともいわれています」。裂けそうな口に、見開いた目は強烈なインパクト。そして両膝には象の顔が……。「すごく大きな体だったらしくその大きさを表すための象だそう」

仏像イラストレーターの田中さんが愛する、京都に行ったら必ず会いたい仏像

京都市内から天橋立まで足を延ばす際はぜひ立ち寄りたい。

◆京都府舞鶴市鹿原595 
JR舞鶴線「東舞鶴」駅から京都交通バス(高浜方面行き)で「鹿原」下車、徒歩10分。

  • 田中ひろみ

    田中ひろみ さん (たなか・ひろみ)

    仏像イラストレーター、文筆家

    仏像本を多数出版し活躍中。講演や仏像ツアーも行う。主な著書に『心やすらぐ仏像なぞり描き』『私を助けてくれた50の禅語 こころが調うゆる禅語』が。

『クロワッサン』1137号より

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