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永井紗耶子さんと風情豊かな「お江戸東京文学散歩」

江戸の市井の暮らしを描いた物語を数多く紡いできた永井紗耶子さん。愛する江戸を描いた作品にまつわる場所を、今の東京で巡ってみた。

撮影・黒川ひろみ 構成&文・中條裕子

『御宿かわせみ』と豊海橋

日本橋が架かる日本橋川を下っていくと中央区日本橋箱崎町で隅田川に合流する。その最東端に架かるのが豊海橋。南側の橋詰は緑も多くちょっとした休憩スポットになっている。正面に見えるのが永代橋。江戸時代には現在よりも100mほど上流に架けられていた。
日本橋が架かる日本橋川を下っていくと中央区日本橋箱崎町で隅田川に合流する。その最東端に架かるのが豊海橋。南側の橋詰は緑も多くちょっとした休憩スポットになっている。正面に見えるのが永代橋。江戸時代には現在よりも100mほど上流に架けられていた。

江戸の人情捕物帳の舞台となった宿を探して

永井さんが江戸に心惹かれたのは、一冊の本がきっかけだった。

「本屋で平積みになっていた『御宿かわせみ』を手に取って読み出したら、ついハマってしまって。菩提寺が浅草にあり小さな頃からあの辺りに出入りはしていたんです。馴染みのある場所が急に物語の舞台になる感じで、地続きのアナザーワールドという感覚で江戸と触れられるおもしろさがあった」

そこから、江戸情緒に触れる楽しさに一気に魅せられてしまった。

その雰囲気を味わいに作中に登場する旅籠「かわせみ」があったとされる大川端の辺りを巡ってみたという。豊海橋からゆったりとした川の流れを眺めたあとは、少し足を延ばして人形町や水天宮へ。この界隈は江戸時代から栄えてきたエリアで、かつての風情を残す老舗も点在する甘酒横丁を散策したり、七福神巡りを楽しんだ。永井さんにとって、江戸情緒を探る原点ともいえる場所がこちらなのである。

橋の北岸は日本橋箱崎町、南岸は新川一丁目となっている。レトロなデザインが特徴的。
橋の北岸は日本橋箱崎町、南岸は新川一丁目となっている。レトロなデザインが特徴的。
『御宿かわせみ』(平岩弓枝、文春文庫、748円)
『御宿かわせみ』(平岩弓枝、文春文庫、748円)

江戸時代末期、大川端にある小さな旅籠〈かわせみ〉に投宿する、さまざまな人たちを巡って起こる事件の数々を描く。何度もテレビドラマ化や舞台化された、人情捕物帳として人気のシリーズ。

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