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「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」サントリー美術館ーー青野尚子のアート散歩

文・青野尚子

ガラスの貴公子、ガレのパリでの活躍をたどる

華麗なガラス器で人気のエミール・ガレ。没後120年を記念して開かれる展覧会は、パリでの彼の活躍にフォーカスをあてるものだ。

ガレは1846年、フランス北東部の古都ナンシーに生まれる。父が営む高級ガラス・陶磁器の製造卸販売業を手伝っていた彼は1867年のパリ万博で半年間パリに滞在、原点ともいえる日々を過ごした。1877年には事業を引き継ぎ、翌年のパリ万博ではガラスなどの部門で銅賞を受賞、世界の大舞台でデビューを飾る。

花器「鯉」 エミール・ガレ 1878年 大一美術館
花器「鯉」 エミール・ガレ 1878年 大一美術館

ガレは熱心にガラスの科学的な研究を進め、新しい素材や技法の開発に努めた。1889年のパリ万博ではガラス作品300点、陶器200点など膨大な作品を用意、ガラス部門でグランプリを獲得するなど大成功を収める。特にこの万博で発表した黒色ガラスを使用した作品は高く評価された。この成功を足がかりにガレはパリの社交会でも交友を広げる。

1900年のパリ万博も国際的な成功を収めたが、ガレの故郷ナンシーではパリと地方の格差が問題視されたこともあった。板挟みになったガレは心労に苦しむ。この気苦労もたたったのか、ガレは4年後に世を去ってしまう。最晩年の作品からは死を覚悟していたのか、気迫のようなものも感じられる。

脚付杯「蜻蛉」 エミール・ガレ 1903ー04年 サントリー美術館
脚付杯「蜻蛉」 エミール・ガレ 1903ー04年 サントリー美術館

ガレが活躍したのはパリを中心とするヨーロッパの芸術文化の新しい波が生まれていた時代だ。その中で華開いたガレの美を改めて堪能したい。

ランプ「ひとよ茸」 エミール・ガレ 1902年頃 サントリー美術館
ランプ「ひとよ茸」 エミール・ガレ 1902年頃 サントリー美術館
パリ装飾美術館所蔵の万博出品作や、開催館のサントリー美術館に近年収蔵されたものもあわせて110件のガラスや陶器、家具、資料が並ぶ。
 
「没後120年 エミール・ガレ:憧憬のパリ」
2月15日(土)〜4月13日(日)
サントリー美術館
東京都港区赤坂9・7・4 東京ミッドタウン ガレリア3階
TEL.03・3479・8600 
10時〜18時(金曜、3月19日、4月12日は20時まで) 火曜休(4月8日は開館) 
入館料一般1,700円ほか
  • 青野尚子 さん (あおの・なおこ)

    アート・建築関係のライター

    著書に『超絶技巧の西洋美術史』(池上英洋さんとの共著、新星出版社)など。

『クロワッサン』1135号より

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