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認知症の世界を理解して実践する:人間らしさを取り戻すーーユマニチュードの哲学と技術

大切な人と心を通わせ最期の日まで人間らしく生きるサポートを。介護現場から生まれたケア技法『ユマニチュード』の技術が役立ちます。ジネスト・マレスコッティ研究所長のイヴ・ジネストさんと、国立病院機構 東京医療センター 総合内科医長の本田美和子さんに教わります。

撮影・土佐麻理子 イラストレーション・イオクサツキ 通訳・石川裕美 文・松本あかね

優しさと愛を伝え、関係性を育むケアの基本「4つの柱」

見る:相手の視界の中心に入る

正面から目と目を合わせる。認知機能が落ちている人の場合、23〜25cm程度まで顔を近づける必要があるため、相手の瞳に自分が映るのを目安に。上から見下ろすのではなく、相手の視界の中心に入ること。腰が曲がってうつむきがちの人の場合は、下からのぞくようにする。

網膜で最も視力の鋭敏な中心窩が感知するのは正面の5〜12度。12度を超えるとぼやけ始める。
網膜で最も視力の鋭敏な中心窩が感知するのは正面の5〜12度。12度を超えるとぼやけ始める。

話す:穏やかに低めの声で

声のトーンや調子からもメッセージが伝わっていることを忘れずに。相手から返事がなくても耳元に穏やかに低めの声で話しかけ、大切な存在であることを伝える。「じっとしていてください」という内容でも「協力してくれてうれしい」など前向きな語彙を使って伝えよう。

認知症の世界を理解して実践する:人間らしさを取り戻すーーユマニチュードの哲学と技術

触れる:広い範囲を柔らかく

触れ方によっても相手に多くのメッセージが伝わる。手首などをつかむ行為は、強制や連行など自由を奪われる不安を感じさせてしまう。下から支えるように、触れる面積を広く、いきなり顔に触れず背中や肩から。実際のケアの場面では「見る」「話す」と並行して行われる。

認知症の世界を理解して実践する:人間らしさを取り戻すーーユマニチュードの哲学と技術

立つ:一日に合計20分以上立つ

一日に合計して20分以上立つことができれば、寝たきりを避けられる。サポートする際は手のひらに相手の手をのせてもらってから一歩下がると、自然に体の重心が前にかかり、立ち上がることができる。歯を磨く間(3分)、トイレまで歩く(3分)という具合に日常に取り入れて。

認知症の世界を理解して実践する:人間らしさを取り戻すーーユマニチュードの哲学と技術
  • 本田美和子

    本田美和子 さん (ほんだ・みわこ)

    国立病院機構 東京医療センター 総合内科医長

    2011年にユマニチュードを日本に紹介し、以来、医療施設への導入、教育、研究に携わり、普及活動を牽引。

  • イヴ・ジネスト

    イヴ・ジネスト

    ジネスト・マレスコッティ 研究所長

    母国フランスで体育学の教師から看護・介護分野へ。マレスコッティ氏と共にユマニチュードを創出。

『クロワッサン』1134号より

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