漫画家・影木栄貴さん:50歳を過ぎて運命の出会い、大人婚だからこそ得られるもの
イラストレーション・影木栄貴 文・長谷川未緒
影木栄貴さん(52歳・漫画家)
「晩婚だからできた、別居婚という選択。週に2日の夫の休みにはなるべく予定を入れないようにしています」
二次元キャラが大好きで、漫画家という仕事柄引きこもり気味、恋愛経験はほぼ皆無、テレビの公開お見合いでも相手が見つからなかったという漫画家の影木栄貴さん。
結婚は諦め、仕事ひと筋で生きようと思っていたが、40代半ばから婚活を始めた。実弟でミュージシャンのDAIGOさんが俳優の北川景子さんと結婚し、実家に両親と残されたときに、このままではひとりになってしまうと実感したからだ。
「自由に生きたいけれど、ひとりぼっちだと寂しくて生きられないような性格で。DAIGOが結婚したとき、漫画の映像化などもあり多忙を極めていて、自律神経の不調で倒れてしまって。誰かにそばにいてほしいと切実に思ったこともあり、婚活を始めました」
友人たちに頼んだところ、次々と男性を紹介された。
お互いを知っている人からの紹介のため気の合う人も多かったが、付き合いだすと性の不一致や喫煙癖など譲れないことも。
失敗をくり返し、教訓を得て最終的に出会ったのが1歳上の今の夫だ。よく行くマッサージ店の担当者が、「ガンダムが好き」という共通項にピンときて先輩マッサージ師を紹介してくれたのだそう。
「作品やブログにまで目を通し、合わせようとしてくれるところに惹かれました。老後をひとりで暮らすのが不安という婚活の理由も一致。私は疑り深いので、景子ちゃんのファンなんじゃないかとか、竹下の地盤を利用して選挙に出るつもりなんじゃないかなど、失礼なくらいあれこれ聞いたんです。夫は誠実に答えてくれて、私が理想とするパートナー像とも重なりました」
出会って10カ月、2022年7月に入籍、結婚の運びとなったが、当初から別居婚が前提だったという。影木さんは病気がちな実父を自宅で最期まで看取りたい。夫も実家で同居となると、高齢の父にとって、急な環境の変化がストレスになることは目に見えていたからだ。
「夫には実家から徒歩5分のところに住んでもらっています。私には仕事がありますし、この年齢まで自分のペースで生きてきましたから、急に同居をする覚悟もありませんでした。まだふたりとも元気ですし、合流するのはもう少し先でいいかな、と」
別居婚なので独身時代と生活はあまり変わらないものの、自分ひとりではないという安心感を得られたことは大きいという。先日、体調不良で入院したときも、親身に看病してくれた。家族の集まりに参加する際も、夫がいることで孤独感を覚えずに済んでいる。
「別居婚では同居婚以上に、お互いに合わせようとする気持ちが大切かもしれません。夫は私が観ているドラマやアニメを一緒に観てくれるなど、共通の話題を見つけようとしてくれます。私も彼の仕事が休みの木曜と金曜は、なるべく用事を入れないようにしています」
「今まで自由奔放に生きてきて、自分の中に人に合わせようとする気持ちがあったなんて、と驚いています。夫とは別居期間を経て真の家族になり、老後は縁側でお茶を飲む穏やかな関係になれればと思っています」
影木さんに大人の婚活がうまくいくコツを聞いてみた
自分にぴったりの人を紹介してもらうコツは?
私の場合は、「老後のパートナーを探しています」と目的をはっきり伝えていました。
「どんな人がいいの?」と聞かれることもありましたが、それは会ってみないとわからないので、数撃ちゃ当たるの精神で、友人が勧める人にはまずは会うようにしましたよ。
結婚することに決めたポイントはどこですか?
私に合わせようとしてくれたことです。「呪術廻戦が好き」と言えば、グッズをプレゼントしてくれたり。
老後のパートナーという前提があったので、最初からお金や介護、お墓などシリアスな話ができたのもよかったです。結婚後は私の家族にも尽くしてくれて、惚れなおしています。
別居婚のいいところは?デメリットもありますか?
お互い自分のペースで生活できるのはいいところ。デメリットとしては、私は実家住まいですが夫に家賃光熱費がかかってしまうことですね。私は夫の収入を知らないのでそれが重荷でないか心配です。
あとは会いたい夜にすぐ会えない、何かあったときすぐSOSできない、などですかね。
お互いの収入や財産について情報共有していますか?
お金のことは夫婦関係に亀裂が入るきっかけになりそうなので、旅行用などに共同財布は作ったもののお互いどのくらい持っているのか知りません。
とはいえ金銭感覚も合わせてくれますし普段の使い方から想像も。私もいざというとき彼を支えられるよう働いて、貯金や投資をしています。
“夫さん”に質問、結婚してどうでしたか?
「精神的に将来への不安が減り安定しました。素晴らしい自慢の妻のお陰で親を喜ばせる事が出来ました。今まで経験していない新しい体験があり刺激があります。妻やそのご家族に喜んで頂いて暖かく受け入れて頂き、感謝しています」
『50婚 影木、おひとり様やめるってよ』(KADOKAWA)。影木さんの実録婚活ストーリー。
『クロワッサン』1126号より
広告